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2011年9月 1日 (木)

下川浩一「自動車産業の危機と再生の構造」(3)

第2章 日米欧自動車メーカーのグローバル戦略

序章で説明されていたグローバル戦略の蹉跌は、とくにその面で世界をリードしていたビック3が急速な業績不振に陥ったのは、戦略面ではミスリートがあった。とはいえ、21世紀を迎えるに及んで、地球規模の環境問題をはじめ、東欧、ロシア、アジア、特に中国、インドといった新興市場の登場、そして国境や地域を越えた事業活動のグローバル展開など、世界の自動車産業を取り巻く環境が大きく変化し、先進的なグローバル戦略を必要としていたことは隠れもない事実であり、この点でこれら各社が先駆性を有していたことは否定できない。そこで、その先駆性にもかかわらず、なぜこのような戦略上のミスリードが生じたかが明らかにされる必要がある。

1.グローバル戦略の先駆性を発揮した欧米自動車メーカー

1990年代に入り、グローバル戦略を明確に打ち出して先駆性を発揮したのはフォードであった。それまでのフォードはも北米は北米、欧州は欧州、アジアはアジアというそれぞれの事業体がその地域の自動車事業について責任を持ち、自立的経営単位として機能し、相互の連携と統合、特にその製品開発や部品調達における連携と統合が欠如していたのを根本的に改め、グローバルな統合化を図ろうというものであった。しかし同時に、グローバル市場の地域的複雑性やブランドの多様性に鑑み、地域的ニーズにきちんと対応できる体制を取っていこうということもうたわれた。さらに、グローバル競争の下で市場の変化が早く、かつ複雑になる中、IT革命によるリードタイムの短縮や部品調達の効率化をはかるものであった。このようなグローバルなビジョンのもとでフォードが進めた戦略の実態としては、ます、欧州フォードと北米フォードの開発部門の統合の統合を試みた。これは両部門を一元化し、開発の重複をなくそうとするものであった。しかし、これらの施策は思ったほどの成果を上げられなかった。

フォードのグローバル戦略に対して、すぐに反応したのはGMであった。GMは富士重工に出資し、韓国の大宇やスウェーデンのサーブを100%子会社化し、フィアットとの提携をきめ、エンジンや車種の共同開発を策する等積極的なグローバル再編に向けてM&A主導の戦略を展開した。

これと前後して注目を集めたのが、ダイムラー・ベンツとクライスラーの合併であった。ダイムラー・ベンツがこれまで乗用車では高級車一筋のメーカーであり、少ない台数で高付加価値を確保できた基本路線を維持するだけでなく、量産車種やミニバン、SUVなどのダイムラー・ベンツでは生産していない車種を製品ラインに組み込み、これまでそれぞれに強かった地域市場を相互に活用する相乗効果が期待できるとされていた。相乗効果はこれらのみに限らず、プラットフォームの共同開発や相互利用、コンポーネントや部品の共同開発と共同購買などにも及ぶとされていた。さらに、膨大な経費を要する先行技術・環境対策技術飲む開発負担を軽くすることも中長期的に期待された。

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