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2011年9月30日 (金)

小林英雄「日中戦争 殲滅線から消耗戦へ」

15年戦争と一括りにして昭和初めの満州事変から太平洋戦争までを一緒くたに見てしまうことが多いため、意外と日中戦争の経過ですら知られていない。新書版ですが、それを丹念に追いかけ、それを知ること以上の読み応えがありました。著者は、近代戦争を殲滅戦(決戦)型と持久戦型の2つのタイプに分けます。それぞれの内容は本書を当たってもらうことにして、日本は殲滅戦型の戦争しか行ってきておらず、日中戦争は持久戦型の戦争となったため、無理に殲滅戦型の戦争を仕掛けようとした日本が自滅したというのです。

日本は、歴史的に四方を海で囲まれ、対外侵略をすることがなく、戦争といっても国内に限られていたことから、兵站の必要性に迫られることなく、周囲の国々との外交調整をしながら戦争を続けるという経験に乏しかったといます。日清・日露戦争は期間も短く、終始列強の力関係などが日本にとって有利に働き、短期決戦で決着がついた。だから、日本の軍隊は個々の戦闘に勝つことが最優先された。だから、個々の兵士の戦闘力が高く、下士官以下の強さは世界有数といえたが、指揮官は広い視野での戦略を考えるということがなく、将官レベルで中国に精通した者が皆無であると、軍隊全体としては猪突猛進しかできない。

それに対して、中国は面積が広く、春秋戦国時代から三国志の時代も、戦闘は広範囲で行われ、遠征距離は長く、兵站や遠征先の住民との関係(占領統治)は戦闘以上に重要で、外交交渉を含めた状況判断が重要になってくる。だから、中国の軍隊は個々の戦闘には弱く、下士官以下の兵隊の能力、モラルが低いが、指揮官は広い視野で全体を見渡しながら戦略的判断ができるという、日本の軍隊と正反対といえる。そこでの戦争は、短期決戦で決着をつけることより、被害を最小限に止めながら、最大限の効果をいかに得るかということが優先される。極端にいえば、勝ち負けよりメリットを優先する。

それゆえ、個々の戦闘では、日本軍が圧倒的な勝利を収めながら、焦土作戦により補給を断たれ、外交面では国際的な孤立に追い込まれて、戦争の長期化とともに日本軍は疲弊していった。結果的に、蒋介石の掌で踊らされたというわけです。

著者の視点が客観的かとうかは分りませんが、この有り様は、何か現代の日本企業の有り様に通じていて、現在の日本企業の苦闘も、同じような要素が強いように思えます。だから、安易な海外進出への警鐘とも読めると思います。

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