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2011年9月27日 (火)

港徹雄「日本のものづくり 競争力基盤の変遷」(12)

5.市場創造なき新事業創出

3DICT革新によって出現した第三の産業分水嶺が、第一・第二の産業分水嶺と大きく異なるのは、その影響が非製造業部門にも重大な影響を与えていることである。とりわけ、流通業、出版業および広告業のような先進経済諸国の主要なサービス産業部門の付加価値成長にネガティブな影響を与えている。このことが先進経済諸国での経済停滞を長期化させている要因でもある。例えば、流通産業部門でe-コマースの拡大による競争激化で付加価値率が低下している。また、出版業のような情報提供サービス産業部門の一部では、付加価値を生み出す有償のサービス提供が、インターネットによる無償の情報提供サービスにとって代わられることによって付加価値を生まなくなっている。

インターネットは様々な分野で新たな情報提供サービス事業を創出させ、人々の利便性を飛躍的に高めた。しかし、インターネット関連の新事業の多くは、新市場を創造するのではなく、既存市場でのパイの争奪に終始している。インターネットによる新事業の創出は、金銭的対価を伴う経済価値(市場)創造効果が小さく、既存市場の代替にとどまっている。GDP統計に計上される生産額は、利便性向上など経済効用そのものの向上ではなく、経済取引に伴う金銭的な付加価値額の増加である。したがって、インターネットによって人々の利便性がいかに向上しても、それが金銭的対価を伴わず、既存の経済活動の代替であるとすると、経済成長への貢献はほとんどないのである。こうしたインターネットによる市場創造なき新事業創出こそが第三の産業分水嶺への移行に伴う構造不況の根源であるといえる。

6.世界市場の一体化とデフレ圧力

流通部門においては、インターネットの発展は取引当事者間の情報の非対称性を緩和させ、市場競争を古典的な経済学が想定したような完全競争市場に近づけた。このため価格競争が激化し、デフレ圧力を強める結果となった。

インターネットのブローとバンド化によって、多くの販売サイトを時間をかけて比較検討できるとともに、大容量の画像情報伝達によって、商品情報があたかも現実の店頭で見るように詳細になり、商品ごとの販売価格の比較も容易に行われるようになり、最安価製品を容易に発見できるようになったため、電子商取引での販売金額は急速に拡大している。そして、既存の商業の営業基盤を揺るがすばかりではなく、既存商店の販売価格をインターネット価格に引き寄せ下落させる傾向にありデフレ圧力を強めている。

21世紀以降、インターネット通信のブロードバンド化、通信料金の定額化によって、インターネット関連サービス業が次々と誕生し、また、電子商取引(e-コマース)の取引高も急増を示した。しかし、これらのインターネット関連事業は、そのサービス提供が多くの場合無償で行われており、新事業創出が経済価値創出と結びつかないという、これまでの経済が経験したことのない状況を生じさせている。また、インターネット関連事業で金銭的対価を伴うものも、多くは既存のサービス産業や流通産業の経済活動をより低いマージン率で代替するものが少なくない。このため、既存産業の付加価値率は低下した。

第一の産業分水嶺が大量生産方式の確立による供給量の著しい拡張と製品価格の急速な下落とによって世界恐慌を引き起こしたのと同様に、第三の産業分水嶺も、新たな大量生産システムのグローバルな移転・拡散による製品供給量の著増と製品価格の大幅な下落を招き、世界的なデフレ圧力強めている。

日本経済は第二の産業分水嶺がもたらす便益をもっとも享受し、「ものづくり大国」として世界経済に大きな存在感を示してきた。しかし、それゆえに第二の産業分水嶺の終焉と第三の産業分水嶺への転換によって最も大きな打撃を受けている。

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