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2011年9月 6日 (火)

下川浩一「自動車産業の危機と再生の構造」(8)

4.グローバル再編の帰結と今後

1990年代後半のグローバル再編は、規模の拡大に重点が置かれ、そこには大きなリスクが存在していたものの、先導者たちは見落としてしまった。これに比べ、当初は受け身に立たされ、おくれを取ったかにみえた日本の自動車メーカーは、バブル崩壊後の不況と第二次円高による困難を、開発や部品調達システムの根本に遡った見直しや生産システムの改革などの一連のリストラで乗り切り、さらにその延長であるグローバル再編に大きな危機感を持って臨んだ結果、国内の厳しいリストラと海外事業の現地化を進める中で結果としてグローバル経営の進化とその方向性を掴みとるという帰結に至った。

今後については、再編の中身の見直しは起こり得る。グローバルM&Aで傘下に入った事業分野やブランドの中での選択と集中が進む。また、必ずしも合併によらないアライアンスの可能性は残されている。特に環境技術や新しい技術開発が絡んだアライアンスや、サプライヤーの共同活用、車両の相互補完など、テーマのはっきりしたアライアンスは、拡大していく可能性がある。今後の展望の中で特に重要性を帯びるのは新興市場諸国である。この地域で成功を収めるメーカーの中にグローバル再編への新規参入が起こる可能性がある。

このような方向性を敷衍してみると、環境技術はグローバル競争の行方を左右するカギを握っていると言える。電子産業や通信産業、そして素材産業や超微細加工技術などの関連産業との緊密な連携をますます必要とすると同時に、今まで以上にサプライヤーとの連携とグローバルなサプライチェーンネットワークの構築が不可欠である。以上のことと関連して、今後は自動車メーカー、つまりアッセンブラーレベルでのグローバル再編よりもサプライヤーのグローバル再編が脚光を浴びる可能性が高い。

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