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2011年10月 5日 (水)

港徹雄「日本のものづくり 競争力基盤の変遷」(14)

3.外注依存度と輸出特化の回帰分析

(1)分析に用いたデータ

(2)1971年データの分析

1970年代以降、日本の機械工業を中心とする輸出産業は急速に国際競争力を強化し、その輸出拡大テンポは加速するとともに、輸出産業の収益性を好転させた。こうした大企業部門を中心とする輸出産業の好調が下請企業にも波及し、下請企業の収益性も改善された。さらに、60年代末からの長期安定的取引の継続によって、下請企業の側では、その焦点の絞られた専門加工分野での生産技術の進歩が着実に進展した。この結果、70年代末になると下請企業のなかにはその加工技術水準において、親企業である大企業の水準を上回るものも増加した。70年代を通じた下請取引の量的拡大と質的向上によって、下請分業システムは輸出産業の起用走力基盤としての基礎を固めたと評価できる。

(3)1980年代の国際競争環境

1980年代後半は、プラザ合意以降の急激な円高と深刻な対外経済摩擦とが進行し、輸出企業にとって極めて厳しい経営環境にあった。しかし、こうした厳しい試練に直面した輸出企業は、コスト削減と非価格競争力の一層の強化に向けた協力を下請企業に要請した。親企業からの激しいコストダウン要請に直面した下請企業では、VA(Value Analysis)/VE(Value Engineering)手法を駆使してプロセス・イノベーションを推し進め、生産コストの大幅な削減を実現した。こうして達成されたコスト削減による利得分の配分については、すでに取引慣行化していた。つまり、VA/VEによるコスト削減効果の内、次期の契約分については2分の1だけ納入価格を削減し、それ以降はコスト削減効果のすべてを納入価格低減に反映させるというものである。このように下請企業へのコスト削減効果の配分比率は少ないが、コスト削減成果の高い下請気企業には発注量が重点的に増大されるため、下請企業はコスト削減に傾注せざるを得なかった。また、1980年代においては、数値制御(NC)工作機械類の性能が一段と向上しその価格も低下したことから、下請中小企業でも、こうした最新の生産設備を積極的に導入して労働生産性を向上させることによって、生産コスト削減を実現させている。

(4)1980年代のデータ分析

(5)1990年代の国際競争環境

1990年代に入ると、経済のグローバル化と生産技術のデジタル化が一層進展した。こうした国際競争環境変化の影響は、産業ごとに濃淡は見られるものの日本の企業間分業システムに根本的な変質をもたらし始めた。とりわけ、90年代後半以降の3DICT革新は、第二の産業分水嶺の終焉をもたらした。

3DICT革新によってもたらされた国際的な競争構造変化の影響は、1990年代末の段階では一部の業種に限定されていた。しかし、21世紀以降になると競争環境変化の影響は広範な産業に波及するようになり、日本の分業システムは重大な岐路に立たされている。

このあと、海外投資や研究開発投資などの細かな分析がまだまだ続きますが、個々の指摘に興味深いものもあり、一読を薦めるに吝かではありません。ただ、姿勢が静観的なので、この分析をもとに、これからを考える参考にするというものではないようです。生産技術の革新により生産量が爆発的に拡大し受給バランスが崩れて、調整のために不景気が発生するという分析はうまい説明とは思いますが、あくまでもこれまでの説明には有効ですが、このスケールが今後に向けて使えるかというと、そこまでの普遍性はないように思います。

というのも、この著者なりのパラダイムというのか仮説設定の前提が明確に示されていないので、データを分析しているのに終始しているかのような印象をうけてしまい。それを理論化し、展開するという本来の学問の部分に弱いように思います。読書の対象としては、秀才のよくできたレポートで、まとまっているが、面白味のない本でした。

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