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2011年10月 6日 (木)

Wishbone Ash「Argus」

318hd30z3cl__sl500_aa300_ 1970年代初頭、主にイギリスから後にハードロックと称されるスタイルのバンドが続々と現れました。このアルバムもそのような流れの中で、ファンの前に届けられたものです。この時期のバンドを聴いていて感じるのは、ハードロックというスタイルが後のバンドと違って所与のものとして捉えていないため、一種の瑞々しさというようなものが感じられます。というのも、このころのバンド、たとえば、このウィッシュボーン・アッシュだったり、ユーライア・ヒープだったり、ディープ・パープルなんかを聴き比べてみると意外とバラエティに富んでいて、一つのスタイルに括ってしまっていいのか迷うほどです。しかも、ディープ・パープルのようなバンドは、初期のフォークソングのようなスタイルから、オーケストラと共演してみたり、様々なことを演っている。それは節操もないほどで、後の世代でバードロックバンドとしてデビューしたクィーン等に比べてみても、クィーンが守るべきスタイルを基本にした上で様々な試みをしていて一貫性があるのは対照的です。視点を変えれば、クイーンの場合は当初から一定範囲の縛りのなかで模索している窮屈さがあるのも確かです。

ディープ・パープルなどのハードロック第一世代といってもいいバンドたちは、ハードロックといわれるスタイルは結果としてそうなったというもので、当初からそういう音楽に縛られていたという感じはありません。ただ、彼らにしても、後には自分で作ったスタイルに自分が縛られていくこともありましたが。

で、前置きが長くなりましたが、このウィッシュボーン・アッシュのこのアルバムも、ハードロック第一世代のそういった性格を色濃く漂わせた作品になっています。かりに、後のヘビー・メタルのバンドの作品と比較してみると、彼らのスタイルとあまりに違うのに驚くほどです。最初の曲の冒頭はフォークソングのようなアコースティックギターの音色でのアルペジオから始まり、ボーカルはシャウトせず高音を澄んだ声で歌い、曲全体を通して歪んだ音は、あまり入って来ません。全体に楽器の音を足して塊のようにしてぶつけてくるといった典型的なハードロック=ヘビメタのサウンドは作ろうとはせずに、それぞれの楽器の線の流れが融け合わずにどっちかというと織り合い、絡み合うというサウンドが志向されています。だから、ハードロックに特徴的なパワフルさというのは希薄で、これに比べると繊細さのようなものが相対的に際立ってきます。そこで、このバンドの代名詞ともなったツインリードギターが、それぞれにメロディが2本の線となって絡み合うのに、当時、よく使われた奏法であるフィードバックのような音を歪ませることはせずにストレートな音で、メロディがよく聞こえるようなサウンドを追求していたと思われます。とはいっても、フォークソングやアコースティックギターのような生楽器の繊細さには及ばず、かれらもエレキギターを手にしてロックという、どちらかというと乱暴な音楽のなかで、相対的にそう聞こえるという範囲内ですが。だから、乱暴で音を人工的に歪ませるロックでありながら、メロディの絡みを繊細に際立たせる相矛盾するようなことをやっていたもので、この作品の中で唯一、ハードロックの定型に近いのが「worrier(戦士)」という曲で、コードをかき鳴らすリフが終始リードする曲で、音量の大きさを一番感じさせる曲ですが、それすらも中間部では一転してやさしい曲調になり、強引に曲を進めることはしていません。

たぶん、この作品は結果としてうまくいったというもので、想像するにエレキギターという楽器を手にした若者が、周囲の人々がみんなロックをやっていたような状況もあって、その中でバンドを始め、最初はその楽器とであった嬉しさで音楽をやっていたが、かれらの本来志向しているというのか、自然と演ってしまう音楽が、そういうものとは少しずれていたために、典型的なハードロックにはならずに、結果としてハードロックとして聞かれることになってしまったが、彼らの音楽をやっていたというのが、この作品だったように思います。だからこそ、このアルバムの収録時間は短いのです。このような作品は例外的なものだから、そんなにたくさんの曲をいれることはできなかった、これで精一杯だった。後から見ればですが。だから、後にCDで復古されたときにボーナストラックが入っていましたが、それは余計で、もともとの作品の例外的な輝きに比べると、ボーナストラックは聴き劣りがして無様です。このバンドは、その後長く活動を続けましたが、絶頂期といわれたライブ盤なども含めて、この作品の他は、あまり聴く気がしません。

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