無料ブログはココログ

« 瀧本哲史「僕は君たちに武器を配りたい」(4) | トップページ | 瀧本哲史「僕は君たちに武器を配りたい」(6) »

2011年11月17日 (木)

瀧本哲史「僕は君たちに武器を配りたい」(5)

第5章 企業の浮沈のカギを握る「マーケター」という働き方

これかに生き残るビジネスパーソンのタイプは、マーケター、イノベーター、リーダー、投資家の4種類だ。ただし、便宜上4つのタイプに分類しているが、ここでは一つのタイプを突き詰めるのではなくて、望ましいのは、人釣りのビジネスパーソンが状況に応じて、この4つの顔を使い分け、仕事に応じて、時にはマーケターとして振る舞い、ある機会には投資家として活動していく。そのような働き方が、これからのビジネスパーソンに求められる。

まず、マーケターとは端的、顧客の需要を満たすことができる人のことだ。大切なのは、顧客自体を再定義するということである。つまり、人々の新しいライフスタイルや、新たに生まれてきた文化的な潮流を見つけられる人のことを指す。自分自身で何か画期的なアイディアを持っている必要はない。重要なのは、世の中で新たに始まりつつある、微かな動きを感じ取る感度のよさと、何故そういう動きが生じてきたのかを正確に推理できる、分析力である。さらに売るものは同じでも、「ストーリー」や「ブランド」といった一見捉えどころのない、ふわふわした付加価値や違いを作れることだ。そもそも資本主義社会では、仕組みとしてあらゆる商品がコモディテイ化していくことが宿命づけられている。ある企業が何か革新的な商品を開発しても、すぐに別の会社がより安いコストで同じような商品を開発しても、すぐ別の会社がより安いコストで同じような商品を作り出し、市場に投入して来る。資本主義社会の中では、常に市場の中で競争が行われ続け、コモディテイ化した商品はどんどん価格が下がっていき、やがて市場から淘汰されていく。陳腐化した商品しか作れない会社もまた勢いが衰え、市場からの退場を余儀なくされる。その繰り返しで、戦後の日本も発展してきたのである。ということは、企業が衰退を避けるには、イノベーションを繰り返して、商品の差異を作り続けなければいけない、ということだ。あらゆる業種、業態の企業が、その前向きな努力をすることで、全体としての社会が進歩していくのが、資本主義社会の基本的なメカニズムなのである。しかし、インターネットが登場してきた以降の現代では、情報の流通コストがほぼゼロとなった。そのため「差異」は生まれた瞬間から、世界中に拡散し、模倣され、同質化していくこととなった。この十数年、企業の栄枯盛衰のサイクルが、かつてないほど速まっているのは、それが大きな利用である。この流れに巻き込まれているのは、大企業と言えども例外ではない。企業のコモディテイ化が進む中で、唯一富を生み出す時代のキーワードは、「差異」である。「差異」とは、デザインやブランドや会社や商品が持つ「ストーリー」と言い換えてもいい。わずかな「差異」がとてつもない違いを生む時代となったのだ。マーケターとは、「差異」=「ストーリー」を生み出し、あるいは発見して、もっとも適切な市場を選んで商品を売る戦略を考えられる人間だと言える。

« 瀧本哲史「僕は君たちに武器を配りたい」(4) | トップページ | 瀧本哲史「僕は君たちに武器を配りたい」(6) »

ビジネス関係読書メモ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 瀧本哲史「僕は君たちに武器を配りたい」(5):

« 瀧本哲史「僕は君たちに武器を配りたい」(4) | トップページ | 瀧本哲史「僕は君たちに武器を配りたい」(6) »