瀧本哲史「僕は君たちに武器を配りたい」(4)
第4章 日本人で生き残る4つのタイプと、生き残れない2つのタイプ
資本主義社会の中で安い値段でこき使われず(コモディテイにならず)に、主体的に稼ぐ人間になるためには、次の6つのタイプのいずれかの人種になるのがもっとも近道となる。
1.商品を遠くに運んで売ることができる人(トレーダー)
2.自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人(エキスパート)
3.商品に付加価値を付けて、市場に合わせて売ることができる人(マーケター)
4.まったく新しい仕組みをイノベーションできる人(イノベーター)
5.自分が起業家となり、みんなをマネージ(管理)してリーダーとして行動する人(リーダー)
6.投資家として市場に参加している人(インベスター)
だが、この6タイプの中でも、今後生き残っていくのが難しくなるタイプがいる。それは、最初のトレーダーとエキスパートだ。コモデイテイ化が進む現在の社会では、これまでならば、様々な職場で求められ活躍できたタイプの人種が、どんどん必要とされなくなっていく。
トレーダーとは、単にモノを右から左に移動させることで利益を得てきた人のことを指す。会社から与えられた商品を、額に汗かいて販売している多くの営業マンがここに分類される。これまで個々の営業マン人間的能力と労力で培われてきた購買行動が、ネットにより瞬時に検索により、すべてのメーカーの同一ジャンルの製品が一覧で、スペックから価格まで比較検討できるようになった。消費者はその中から最も安いものを選んで買えばいい。企業においてもトレーダー的な業種、商社をはじめ広告代理店や旅行代理店のような商品を右から左に流すことで稼いでいた企業は経営が苦しくなってきている。
生き残りが難しくなってきているもう一つのタイプは、エキスパートだ。エキスパートとは専門家のことを指す。一つのジャンルに特化して、専門知識を積み重ねてきた人は、これまであらゆるジャンルで尊敬の対象だった。しかし、ここ10年間の産業のスピードの変化がこれまでと比較にならないほど早まってきて、産業構造の変化があまりに激しいために、せっかく積み重ねてきたスキルや知識自体が、あっという間に過去のものとなり、必要性がなくなってしまうのである。ある時期に特定の専門知識を身につけても、その先にあるニーズが社会変化に伴い消えると、知識の必要性が一気に消滅してしまうのである。
トレーダーとエキスパート、これまでのビジネスにおいて重要とされてきた「営業力」と「専門性」、その2つが実は風前の灯となっている。何かの分野でエキスパートであることや、モノを動かしてサヤを抜くという仕事は、かつての生産性革命の時代や、国家間での貿易で儲けていた時代にはヒーローでいられた。しかし、今現在の「付加価値を生む差異があっという間に差異でなくなり、コモディテイ化した人材の値段がどんどん安くなっている時代」には、時代遅れの人々にならざるを得ないのである。
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