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2012年4月17日 (火)

吉岡英美「韓国工業化と半導体産業 世界市場におけるサムスン電子の発展」(1)

L16354 第1章 DRAM市場におけるサムスン電子の成長

第1節 後発企業から先行企業への変貌

サムスン電子はDRAMの世界市場において、1986年には3.3%に過ぎなかったシェアを、1992年には13.5%にまで伸ばし世界トップになると、その後ものばし、2008年では30%となっている。この中でとくに、2002年を境に下位企業とのシェアの差が急速に拡大している。さらに2000年以降営業利益率でも他社に対して高い成果を上げている。半導体産業は、基本的には需給市場の動向により決定される価格に従わなければならないと言われ、顧客にとってどの半導体企業からDRAMを調達しても違いがない中で、サムスン電子への集中度が急に高くなっている。

製品開発の側面では、1984年に64K世代からDRAM市場に参入し、16M世代で日本企業と並び、64M世代から製品開発を先導する立場に立った。DRAMの場合、次世代製品開発に先立って、そこに組み込まれるプロセス技術の選好開発が必要な場合があるが、サムスン電子が自ら、このプロセス技術開発に本格的に着手したのは64M世代の後期とされている。だが、半導体製品の開発には様々な段階があり、一般的には①半導体の国際学会での発表②エンジニアリングサンプル(第一次試作品)③コマーシャル・サンプル(第二次試作品)④量産工場の立ち上げ、と言う段階を経る。ところで64M世代の開発で先行したのは日本企業であり、サムスン電子が先行したのは③④の段階になってからだという。学会やエンジニアリングサンプルの開発では日本企業に遅れを取っても、その後の量産ラインの立ち上げに至るまでの期間を短縮することによって日本企業への追い上げを加速した。

サムスン電子と言えば、大規模で集中的な設備投資が良く言われるが、キャッチアップ過程では前年の売上高を上回る設備投資を行っていた。この時には財閥という組織構造のメリットを最大限に活用していた。オーナー個人が大規模な設備投資に伴うリスクを負担していた。しかし、1990年代半ばからは、平均して売上の30%程度の設備投資で、他社と変わらないレベルになっている。キャッチアップ完了後は資金面から見ても、事業活動から得られた内部資金を持って拡大成長をはかるという自律的な発展を実現している。半導体企業は基本的に需給バランスにより決まる市場価格に従わなくてはならないため、次世代開発で他社に先行しても、他社が追い付き供給が増えれば価格は半分以下に低下する。そのような条件のもとで半導体企業が相応の利益を得るには、次世代製品の先行開発を通じて高価格を享受するとともに、その後の価格の急落に備えてコスト競争力を強化することが重要な課題となる。サムスン電子の場合、次世代製品開発と市場投入で日本企業に遅れをとってキャッチアップ段階では、専らコスト引き下げを徹底してシェアと利益を確保することに努めた。しかし、規模の経済だけではない新たな優位の源を獲得したことにより、いっそうのコスト競争力を発揮するとともに、次世代製品の早期投入を通じた先行者利益の享受が可能になった。

第2節 DRAMの販売市場の確保

サムスン電子の半導体部門の売上高に占める内需の比率は、1986年に6.3%、2008年でも5.8%に過ぎず、DRAM事業の開始当初から輸出を通じて急成長を遂げてきた。輸出先を国別に見てみると、北米が50%近くを占めているが、世界需要構成と比べてみると、北米市場とアジア・太平洋市場向けに偏った出荷構成となっている。1990年までには、北米とアジア・太平洋及び欧州で中心的な存在となっている。そして192年以降には日本市場にも本格的進出を果たしている。とくに日本市場は、供給面から見れば社内あるいは国内で必要なDRAMを調達できるのに、日本の需要者はあえてサムスン電子から調達するようになっている。

第3節 製造装置の調達源

製造装置の調達は、組立用装置は相対的に国内調達が進んでいるとはいえ、米国と日本からの輸入が大半を占めている。

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