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2012年5月24日 (木)

あるIR担当者の雑感(64)~アナリスト・レポートを書いてもらえる幸せ

私の勤め先の会社は3月決算なので、先週、決算短信を発表しました。この1年間は、スタート時点が震災や津波の大被害や原発関係等で、東半分は大混乱の状態からで、その後、円高が続いたり、総理が替わったり、欧州で金融危機になったり、タイの洪水で日本企業の操業が止まったりと、大事故や災害がこれでもかと言うほどに押し寄せた1年でした。そんな中で、産業向けの制御装置を作っている小さなメーカーが、よくも増収増益になったというものでした。それだけに、体力や気力、使い果たした感があって、次の1年は強気になかなか成れませんでした。大企業なら一気呵成に、ここぞとばかりにイケイケ状態になるのでしょうけれど。短信の業績予想は、傍からみればコンサバ、とか弱気とかいわれそうな数値しか打ち出せませんでした。でも、社内のみんな耐えて、頑張ってました。その姿を見ていると、これ以上…とはなかなか言い辛い。正直、もうこれ以上は…って思っていました。

説明会では、コンサバとか言われるのは、ある程度覚悟して。

で、先日、あるアナリストが私の勤め先についてレポートを書いてくれました。私の勤め先は、ここで何度も書いている通り、地味な中小企業なので、レポートはなかなか書いてもらえず、有名な大企業が決算発表のあとレポートが出されるのを羨ましく見ていたものでした。それが今回は、指を咥えて物欲しそうに眺めている側から、レポートを書いてもらえる側になりました。何よりも、決算を発表した後、それについて反応が返ってくるのは、何よりも、発表した手応えを感じることが出来るわけです。多分、大企業の担当者は当たり前のように思っているかもしれませんが、その返ってくるということが、如何にありがたいか、ということなのです。何でもそうなのですが、勢い込んで何かを表現しようとしたときに、それを聞いてくれる人がいるというだけで、意気込みが全然変わってくるものなのです。それを、今回、実感として味わいました。IRは企業と市場とのコミュニケーションなどと理想をいくら言ったところで、一方的に発表するだけでは空しいのです。こうやって、決算に反応してくれるということで、一方通行ではなくなっているわけです。

そして、内容を見てみると、私は会社の内部にいる人間なので、客観的に会社を見ようとしても、どうしてもできません。しかし、レポートを読むと限られた紙面のなかでコンパクトに手際よく書かれていて、こういう会社だというイメージが明確に分るのです。きっと、このレポートで初めて私の勤め先のことに触れる人も、一定のイメージを掴むことが出来るでしょう。私などはなかなか会社のことを手際よく説明することが出来なくて、悩んでいるのですが、ここまで鮮やかにやられてしまうと、脱帽以外にはありません。

そして、アナリストが独自に業績の予想をしてくれているのですが、これが、見事なまでに、会社のコンサバを嗜めるような強気の数字でした。しかし、アナリストも記名で書いているわけで、読む人には責任があるところで、会社発表の数字かなり離れた数字をあげるというのは、ある意味、とても勇気がいることのはずです。そこで、このような地味な会社に縁もゆかりもないのに、敢えてそのようなリスクを犯して、数字を突きつけてくるように見えました。それだけ、私の勤め先を評価してくれているということで、IR担当者としては、背中を押されたような気分です。こう言うのも何ですが、沢山のレポートを書いてもらえる大企業には、そこまでの有難味を感じるということは少ないでしょうし、多くの中小企業はレポートを書いてもらうことが出来ず、このような経験すらできない状態にあります。そのような中で、このような経験をさせてもらえた、というのは、そうあることではないのではないかと思います。今回、レポートを読んで、元気をもらったような気分です。社内に向けても、我々のことを期待して見てくれている人がいる、もうちょっと頑張ってみよう、と言える気になりました。

そういう意味では、レポートというのは、そもそも投資家のために書かれるものなのでしょうけれど、本当はIR担当者をはじめとした企業の人間が恩恵を受けているのかもしれないと思いました。だから、いくつもレポートを書いてもらっている会社は強いのだ、と思いました。私の勤め先も、いつかはそういう会社にしたい、そう願っています。

今回は、ベタなものになってしまいました。前回は辛辣で、今回はベタで、最近、情緒不安定です。

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