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2012年5月 5日 (土)

渋谷克美「オッカム哲学の基底」(7)

第五章 言語の階層

オッカムは、分離された意味において用いられる様相命題、結合された意味で用いられる様相命題との区分の問題を取り上げる。このような区分を設定することによってオッカムは、心の外の事物について語る言語のレベル1の命題と、外界の事物を表示し、代示するレベル1の命題そのものについて語るレベル2の命題を区別し、言語の階層というアイデアを彼の哲学の中に導入しているからである。

(一)オッカムのテキスト(『大論理学』第Ⅱ部第9、10章)の解釈

オッカムは第1章で様相命題について説明した後で、この第9、10章において様相命題の二つの区分について述べる。一つは命題の言表句あるいは不定法句が様相と共に解される場合、つまり様相命題を結合された意味において解する場合である。もう一つは様相命題の中に様相が、命題の言表句あるいは不定法句なしに置かれている場合である。オッカムは結合された意味における様相命題の心理条件を次のように述べる。すなわち、結合された意味において用いられた命題が真であることを知るためには、或る命題が必然であるために何が必要であるか、或る命題が偶然である、真である、不可能である、知られている、知られていない、信じられているためには何が必要で売るかを知るだけで十分である。

また、分離された意味における様相命題の真理条件としを次のように述べる。分離それた意味において用いられた命題が真であるためには、述語が、主語の代示するところのもの、あるいは主語の大示するところのものを指示している代名詞に適合することが必要である。すなわち、述語が、主語の代示するところのものを指示する代名詞に述語づけられることによって形成される突然命題に、ようひぅが述語づけられる。

すなわち、結合された意味において用いられた様相命題が真であるためには、言表句である命題に、様相が述語づけられることが必要である。他方、分離された意味において用いられた様相命題が真であるためには、主語が代示する外界の事物を指示して「これは~である」と言う事が必然、あるいは可能であることが必要とされる。

(二)オッカムの結合された意味における様相命題と、分離された意味における様相命題を区分した理由(1)

オッカムが、このような区分をしたのは、先ず第一に、両者の論理形式の相違によるものが考えられる。結合された意味において用いられる様相命題では、様相が命題の述語であり、「Dは必然である」という様相命題の中で様相は、言表句D全体に述語づけられる。それ故、結合された意味において用いられる様相命題においては、様相である名辞は、言表句D全体を表示する第二概念の名前であると解される。他方、分離された意味において用いられる様相命題においては、様相命題は言表句なしに解されるのであるから、様相が言表句Dに述語づけられる、様相命題の述語であることはできない。このことから、オッカムが様相命題を結合された意味において用いられる場合と分離された意味において用いられる場合とに区分する理由は次のようなものとなる。様相は第二概念の名前であり、外界の事物を表示する記号である第一概念の名前を表示する。しかるに外界の事物を表示する記号には、非複合的な名辞と、それらの名辞から複合された命題の二通りがある。従っても様相が非複合的な名辞を表示する場合と、様相が命題を表示する場合とを区別する必要がある。前者が様相命題を分離された意味において解する場合であり、後者が様相命題を結合された意味で解する場合である。

(三)オッカムの結合された意味における様相命題と、分離された意味における様相命題を区分した理由(2)

さらにオッカムは、この両者を区別することによって、言語に階層を設ける意味論的区別を主張していると考えられる。結合された意味において解された様相命題の場合には、命題の主語は単純代示あるいは質料代示を持つ。このような様相命題は、言語のレベル1に属する言表句である命題について語る、言語のレベル2の命題である。他方、分離された意味において解される様相命題の主語は個体代示を持つものであり、外貨の事物について語る言語のレベル1の命題である。前者は言表句についての言明であり、後者は外界の事物についての言明である。オッカムは様相命題を、結合された意味において解される場合と分離された意味において解される場合とに区分することによって、両者の言語の階層の相違を主張していると理解できる。

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