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2012年6月15日 (金)

あるIR担当者の雑感(67)~アナリスト・レポートを書いてもらうために

先日、レポートを書いてもらえたことを自慢するようなことを書きました。そのことは、自覚して書いたものなので、誰も相手にしてくれないだろうと思っていたら、意外とアクセスがあるようです。考えてみれば新興市場を含めて4000社近い上場会社がある中で、アナリストが定期的にレポートを書いてくれるような会社は百社に満たないのではないでしょうか。それ以外の会社はあぶれてしまっているわけで、私の勤め先は、今、その境界線に、かろうじて近づいているというところかもしません。でも、やっぱり書いてほしいと真剣に思っているIR担当者や経営者は、多いのではないかと思いました。

ただ、そういう人たちは、どれだけ本気でそう思っているのか。こういう言い方は傲慢に聞こえるかもしれません。「書いてもらえれば、いいナ♡」程度の中途半端な人も、中にはけっこういるのではないでしょう。多分、そういう人は、そのことが分かっていないと思います。自分では本気で思っていると思っているでしょう。ためしに、それでスッパリ分かるというわけではありませんが。そういう人は、自分の会社のアナリスト・レポートを自分で書いてみるといいと思います。大手の証券会社の店頭にいって頼めばもらえると思いますから、それを手本にして自社の企業レポートを自分で作ってみるのです。そうすると、レポートを書くということが、どれほど大変なことか分かるのではないかと思います。大変かどうかは主観的なことなので、それ程のことでもない、と仰る御仁もいることでしょう。そこで、客観的なことをいうと、そこでレポートを書くために様々な情報、数値データ等の定量的情報や市場環境、会社の強みやリスク等の定性的情報が、必要だったと思います。その必要だった情報を全部公表しているでしょうか。多分、社内の人間は暗黙のうちに会社の情報が蓄積していますが、社外のアナリストには、そういう蓄積がないので、きっとそれ以上の情報が必要なはずです。最低限のところで、アナリストは、それだけの情報がなければ、レポートを書きたいと思っても書くことは事実上不可能なのです。

ということは、アナリストにレポートを書いてもらうために必要な情報を公開することは、最低限必要な条件であるはずです。まず、その条件を揃えることなしに、「レポートを書いてもらえれば、いいナ♡」といくら望んでも、誰もそれを本気とは取ってくれないのではないか、と思います。

実は、このことはレポートを書いてもらえないような会社のIR担当者にとっては、共通の悩みではあるのですが。担当者がいくら熱心でも、上司、あるいは経営陣、もしくは営業とか社内の他の部署から反対されて、情報を出すことができないと悩んでいる担当者は少なくないと思います。それは十分分っていてますし、私も現実に、今も、その壁の前で右往左往しています。だから、敢えて言います。情報を出すことをしないで、レポートを書いてもらおうと願っても、それは本気と言えないのです。では、どうすればいいのか。自分で考えるしかありません。突き放した言い方ですが、ビジネスには困難がつきものです。「プロジェクトX」でも「ソロモン流」でもみんな不可能と思えるほどの困難を、工夫と努力で克服してきているので、同じように自分で考えて立ち向かうしかないのではないか。仕事で本気というのは、そういうことではないかと思います。そして、実は、アナリストも、そういう担当者を見ているのではないか、と思います。アナリストにとってIR担当者は会社への窓口です。担当者が本気であれば、会社への印象に大きく作用するでしょう。まさか、だからこの会社は本気だとはすぐには思わないでしょうが、担当者がこれだけ本気なのだから、この会社には何かあるかもしれない、と興味を抱く可能性は高いのではないか。

なんか、精神論のお説教のようになってしまいした。傲慢も甚だしいですね。実は、アナリスト・レポートを書いてもらえない会社でも、上場している会社であれば、多数の投資家が目を通すようなレポートを年4回も書かれているのです。それに本気で対応していますか。まずは、そこから始めてみるというのは、やってみてもいいのではないかと思います。私は、今も、たいへんお世話になっています。それは『会社四季報』です。

これは、反面教師としてですが、『会社四季報』2012年1集の342ページに掲載されている、ある食品会社へのレポートの文章です。

【開示消極的】報道媒体への平等対応理由に個別取材拒絶のうえ、決算説明会なし。ファンドによるTOBに対抗して発表した中計では、今期に売上高177億円、営業益23億円と潜在能力訴求。画に描いた餅。

これは事実です。ここまで書くのです。まずは、足元から身を引き締めなくてはなりません。

なんか、喧嘩腰に見えますか。営業マンがガードの固い顧客を説得して商品を売り込み、後に馴染客になってもらう、というのに似ているかもしれません。

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