あるIR担当者の雑感(83)~アナリスト・レポートを書いてもらった後で
先日、あるアナリストの方と食事の席に同席する機会があり、いろいろと興味深い話を聞いてきました。そのアナリストの方は、私の勤め先の会社の企業レポートを書いて下っている方で、説明会にも出席いただいたり、会社にも取材で来ていただいたり、話をする機会が何度あった方です。何度も、そういう場で話をしているうちに、お互いに考え方とか、姿勢は理解してきたと思っています。
そのような関係のアナリストの方と、先日、お会いして、ある程度飲み、かつ、食事をしながら話していて、実は、ついこの前、その方に最近のレポートを書いていただいたところだったこともあり、その書いていただいたレポートについても、話をすることができました。そこで、レポートの内容に関して、執筆したアナリストの思いや、対象となった会社に対しての思い、あるいは、あえてレポートに書かなかったこと、他にレポートを書いた会社と比べて私の勤め先はこうだ、というようなこと様々なことを聞くことができて、大変勉強になった、というか有意義な時間を過ごすことができました。
私は、これまで、このブログの中で、アナリストにいかにレポートを書いてもらうか、ということを考え記事をアップしてきましたが、それだけでなく、レポートを書いていただいた後も実は、考えるべきことがあるのではないかと、思いました。いままでは、レポートを書いていただければ、大成功!目標達成!のような感じで、それがゴールと思っていました。しかし、そうではないと気が付いたというわけです。
アナリストは、人間ですから、機械的にレポートを書いているわけでなく、レポートを書いている企業に対しての何らかの思いとか意見を持っているものだと思います。そうでなければ、企業の業績を分析するだけでなく、今後の経営を予想し評価などできないと思います。(これは、アナリストが主観的な基準、例えば好き嫌いで企業を評価しているというのではありません)例えば、ある企業の将来を予想し、それに対してポジティブな評価をするということは、その企業に対して期待をかけるということに外なりません。そのときに、経営者の資質とか企業が本気で取り組んでいるかとか分析データでは測れないような要素も入って来るでしょう。その時には、実際に企業を訪問したり、経営者と話してみると言った、データとは直観的なものも入ってくると思います。また、経営というのは常に動いているので、たとえ直近といえどもデータが役に立たない場合もあります。そのため、アナリストもレポートを書いている企業に関してデータだけにとどまらず、直観的に捉えたものとか何らかの思いといったものを持っているのではないか。レポートは、データが重要な要素ですが、文章で企業の内容や状況を説明するものですから、書く人にとっては一種の表現でもあります。また、レポートを書く場合には紙面スペースの制約や、レポートということで書けないことなどもあると思います。そのような諸々を考えてみると、レポートとして出来上がったものは、いうなれば氷山の一角に過ぎず、実は水面の下には見えない巨大な氷の塊が沈んでいるのではないかと思います。それを、執筆した当のアナリストから話を聞くことができないかと、思うのです。もしかしたら、執筆したアナリスト自身の方にも、実は話したい人もいるのではないかと思います。
それらのようなことから、レポートを書いてもらったら、そのレポートについての思いとか、レポートで書きたかったことや、書けなかったことなどを、執筆者であるアナリストと話をすることができないかと、感じました。そのようなことは、IR担当者から経営者にレポートが報告され、その内容を説明する時に、よりよくアナリストの意図を伝えられるのではないか、と思うからです。
というのも、私がIRという業務の上で取材を受けたり、説明会に来ていただいているアナリストの方々は、真摯で、とくに企業に対して成長して銘柄としてとしても伸ばしていきたい、というような姿勢を保っている方々なのです。そういう方々が企業レポートを書く際には、そのような姿勢が反映していると思われるからです。つまり、そういう方々の書くレポートには、企業が成長していくためには、これが課題だという指摘やこういう施策もあり得るという提言が隠されている場合もあるのです。そういう企業に対する叱咤激励がありながら、それを放っておくということは、書いた方にも失礼だし、何よりも企業にとってもったいない。本来、レポートを読み込むことで、それが十分に出来ていなければならないし、取材などでやり取りしていれば、アナリストの姿勢や考え方は何となく分って来るものです。といっても、実際に当人の口から聞くと、それは全然違ったものとなります。
レポートをアナリストに書いてもらうということは、IR担当者にとっては、大変重要なことですが、レポートを書いていただいて、そのあと、そのレポートをどう活かすか、というところで企業の力量の差が出てくることになるのではないでしょうか。
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