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2012年8月14日 (火)

あるIR担当者の雑感(81)~個人投資家向け説明会の試み(5)

これまで書いてきましたように、今回の試みは継続して2回、3回…と続けて行くことに意義があります。そして、同じことを繰り返していくだけでは尻すぼみになるのは火を見るより明らかです。そこで、とにかく説明会を行い、その後のこと、アフターフォローが極めて大切になると考えています。今回は、そのことを中心に考え行きたいと思います。

おそらく、一般的な個人投資家向け説明会の場合、開催してそれで終わりで、あとは何もしないということが多いのではないでしょうか。ところが、機関投資家と1 on 1ミーティングをした場合には、交換した名刺を保管しリストをつくり、当日か翌日にお礼のメールを送り、決算発表などの折々の情報をフォローの形で送ったりしているのではないかと思います。まずは、その程度のことを、説明会に出席した個人投資家に対して始めていこうと考えています。なんだ、その程度か、と思われるかもしれませんが、それすらやっていないところが多いようなので、先ずは最低限のこととして行っていきたい。

ということは、説明会に出席した個人投資家に、趣旨を説明して個人情報を提供していただくということになるわけです。機関投資家の場合は、名刺交換という手段で組織の関する情報のやり取りで、十分ですが。個人の場合は、住所や連絡先その他の個人の属性情報をアンケートの形でストックできることになるわけです。もちろん、こちらの趣旨に合意して個人情報を出してくれなければ、進みませんが。それができれば、会社独自で個人投資家のデータベースを作ることができることになるわけです。営業の場合の見込先リストです。例えば、自動車のディーラーの場合、某自動車メーカーの営業マンは折に触れて顧客を訪問し、車の売込みを無理にしなくても、顧客と信頼関係をつくり、情報を提供し、ニーズを把握したところで、顧客に他社の車を買う気を起こさせない関係を作っていくといいます。IRは、それとは違いますが、定期的なやり取りを続けることで、投資家からの信頼は積み重ねられていくものと考えています。

また、前回まで、説明会を双方向性のものにしたいと申してきましたが、1度説明会に出席した投資家に、その後でメールその他で会社とやり取りしていくことで、次回の説明会に出席しやすくなるでしょうし、説明会で質問や意見を話しやすくなると思います。だから、説明会に限らず、このやり取りの中で、質問や意見のやり取りができれば、さらに効果があがることでしょう。そのきっかけとして、説明会の後で、説明会に対しての要望や意見を募り、それを意見や意志表示の機会として行けるのではないかと考えています。開帳された意見の中でいいものがあれば、次回の説明会で採用すると、その意見を言った人は、自分の意見が反映したことを知り、さらに意見を言うようになるでしょう。そこで、会社と投資家との交流が始まるのではないかと思います。

実際に、私の勤め先ではアナリストや機関投資家を対象にした決算説明会では、すでに行っています。説明会の後、出席者にパーセプションを社外の人にお願いすると、多くの意見が寄せられています。厳しいお叱りを受けることもありますが、それは、会社が聞く耳を持っていると信頼して、意見してくれていることで、私の場合は、たいへん感謝しています。

これを個人投資家との間でもやって行こうということです。だから、IRということの本来の趣旨を考えれば、突飛でも何でもない、きわめてオーソドックスなことです。

そして、ここから先は突飛なことの部類に入るかもしれません。ここまでは、会社と投資家との間の関係です。個々の投資家が個々に会社との関係を結んでいるという構図です。それぞれの関係は別々です。イメージで言うと、会社から数本の糸が下がり、その11本に投資家の11人がそれぞれに繋がっているというイメージです。ここには、横のつながり、つまり、投資家同士のつながりがありません。できれば、同じ説明会に出席したということで出席者どうしの繋がりを作ることはできないかと考えています。そうなった場合、投資家にとっては友人が増える、投資情報をやり取りする相手が増えるというメリットがあります。説明会で知り合いがいることによりリラックスすることができます。会社にとっては、次回以降説明会に出席してもらい易くなる、出席者同士で横のつながりができれば、出席した投資家を有機的に組織化することができる、というメリットがあります。そうなった場合、前回にお話ししたような、複数の会社で協力して説明会を行うとか、証券会社や市場関係者とコラボレーションをするときに、強みを発揮することができると思います。もし、そこでソーシャル・メディアなどのネットワークを媒介として活用できれば、予想外の広がりを持つ可能性も考えられます。

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