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2012年8月11日 (土)

あるIR担当者の雑感(77)~個人投資家向け説明会の試み(1)

個人投資家向けのIRということがよく言われます。このブログでも、何度か私見を述べたと思います。基本的には、投資家を機関投資家とか個人投資家とかと、最初から色分けすることには賛成しかねるし、企業のホームページで個人投資家向けのページには相手を見下したような上から目線を感じてしまって好きではありません。ただし、ターゲットを限定して戦略的にIRをするということを以前に述べた身としては、すべての投資家を遍く平等に対象にするということもしません。

ではどうするかといったときに、機関投資家とか個人投資家という区分ではなくて、それらを含む投資家という範囲の中で、企業独自の切り口でターゲッティングをしていけばいいと思います。その時に、大切なことと、キーワードとなるのが「対話」ということばですが、それも以前にここでも考えを述べました。

前置きはこのくらいにして、このたび、私の勤め先では個人投資家を対象にした説明会&工場見学会を行うことにしました。これまで述べてきたことと矛盾するようです。しかし、これまでも、アナリストや機関投資家に対しては説明会やミーティングを定期的に実施しているのに、そうでない投資家に対しては何もしていないのは片手落ちではないか、と思っていました。そこで、その片手落ちを解消するために説明会を行うというのが趣旨です。だから、単発で1回限りということではなくて、定期的な開催を前提にしています。会社によっては個人投資家向け説明会を年間○会開催というような実績を公表しているところもありますが、それは往々にして1回限りの単発の説明会を何回も行っている、ということだと思います。今回、私の勤め先でやろうとしているのは、決算説明会のように毎年1~2回定期的に説明会を継続して行うということです。だから、毎回出席する投資家も出てくる、そういう前提で行います。

ここで定期的に開催する説明会を行うのであって単発の説明会でないと強調しているのは、両者は似ているようで実は全く違うものだと考えているからです。例えば、決算説明会に機関投資家に1度出席してもらったらそれで投資してもらえると考えているIR担当者はいないと思います。同じように、アナリストが初めて出席して、それでレポートを書いてくれると思っている担当者はいないでしょう。しかし、個人投資家向け説明会をひらいて多数の個人投資家に向けて社長が熱弁をふるうと、それだけで会社の株を買ってくれるというケースがあるといいます。そうなると、個人投資家向け説明会では、そういうことを考慮して説明を考えるでしょう。そこでアッピール的な要素が多くなるのはやむを得ないことでしょう。実際のところ、単発の1回限りの説明であれば、多少は言いっ放しにできるという意識は、説明する側に多少はあると思います。例えば、有望と思われる新規事業に着手している場合、説明会でその事業の将来性について経営者が熱く語ることは出来ます。これに対して決算説明会では、一度そういう話をした場合、その後継続的に、その後どうなっているかの進捗状況や結果を説明していかなくてはなりません。(それを、やっていない会社もあるようですが)そうすることによって、投資家と企業との間で信頼関係を作っていく、そういう場として説明会を位置づけられると思います。また、単にデータだけでは分らない会社の空気とか企業文化や体質のようなことも、伝わっていくだろうと、身近なことで言えば、業績予想を堅く出している会社か、挑戦的な会社かといったことは単に決算書を見ただけでは分かりませんが、数回決算説明会に出れば分かります。その行き着く先が投資だったりレポートだったりするわけです。

また、説明会で話される内容の面でも、単発の場合は会社をざっと紹介することが主となるのに対して、定期的な説明会の場合には決算状況等を継続的に説明していくことになります。当然内容のレベルは定期的な説明会の方が高くなるでしょう。継続的に決算や事業状況を説明していけば、去年と今年はどこが違うか、どこが同じかという変化を見るということになれば、他社との比較や一般的な景気状況なども把握している必要があります。そのため、説明会に出席する側にもある程度の準備が必要になります。アナリストや機関投資家はプロですから、最低限の業務知識として準備は整っていますが、アマチュアである個人投資家の人々は、そのレベルが人によって違うでしょう。今回の試みでは、機関投資家向け説明会の説明と同じレベルで行うつもりでいます。その理由は、継続的に説明を続けるためには、ある程度のレベルが必要であるということと。個人投資家に対しての会社の敬意という点からです。これについては、以前にもブログで書きましたが、企業のホームページで「個人投資家の皆様へ」というようなページになるとページのトーンが急に変わって、揶揄的に言えばお子様向けのような相手をバカにしているとしか思えないところがあります。当の企業は、そんなことを意識しているわけではないのでしょうが、ページを作成する姿勢のどこかに「個人投資家は素人で何も知らないから」という見下すような意識があったと思います。それならば、私の勤め先では、逆に投資家として尊重して、同じ目線で接しようとするわけです。但し、この場合投資家の方にも、それなりのレベルでいるための努力を求めることになります。

このことについては、まだまだ、語りたいことがあるので、何回かに分けて書き込んでいきたいと思います。

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