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2012年8月13日 (月)

あるIR担当者の雑感(79)~個人投資家向け説明会の試み(3)

今回の個人向け説明会の試みにおいて、双方向のコミュニケーションというのを一番重要なことなので、それについて考えてみたいと思います。投資家(ここでは個人投資家)に対して、企業から一方的に情報提供するというのではなく、投資家からも積極的に参加してもらい、互いのコミュニケーションを図る。それを個人投資家説明会という場で進めていって、いままでとは一味違う個人投資家向け説明会を試みるというのが、今回の趣旨と言えます。しかし、それは説明会を主宰する企業の側の一方的な論理であって、投資家の側はどう受け取るかは分かりません。

しかし、IRのもともとのあり方からいえば、当たり前のことで、何も企業の側の一方的論理とは言い切れないのではないかと思います。実際に、株主総会の場合には、IR的要素を入れて開かれた総会といって、個人株主からの質問に丁寧に答えようという動きがあります。今回の説明会では、質問に丁寧に答えるだけでなく、質問を引き出すまで、もう一歩進めるということです。

これには、調査のような具体的な根拠がないのですが、個人投資家に、そのような志向性をもった人びとがいるのではないかと思っています。これはあくまでも仮説です。私の実務上の経験では機関投資家とのミーティングを行った場合、初めてという場合、最初の10分程度で簡単な会社紹介はしますが、後は相手の質問に答えることに時間となります。最初から質問が来る場合もあります。そういうことを考えれば、個人投資家も自分なりに会社に聞きたいことは多いはずです。それに、最近の個人投資家向けの説明会では、個人投資家から真摯な質問が出てくる傾向にあると聞いています。このようなことから、個人投資家全部に当てはまるとは言えませんが、その一部に確実に機関投資家と同じように投資や企業との関係を作っていきたいと思っている人たちが確実に存在していると考えられます。例えば、こういうバターンは考えられると思います。40代後半から50代の会社員で、老後の年金に不安を感じて株式投資を始めている。投資先の会社のことは、これまでの会社員の仕事の経験から実務上のノウハウや経験、経済や経営への知識も蓄積もあり、インターネットや情報収集にも仕事を通じてそれなりのことは出来るし、人脈もある。こういう人々にとっては、機関投資家のファンドマネージャー程の深い知識や経験はないでしょうが、広い意味での知識や見識の点では優っているし、企業みる目もある程度備わっているでしょう。そういう人にとっては、今、広く行われているような個人投資家説明会程度のものでは、むしろ物足りないのではないかと思います。

もう一つ、データがあります。私の勤め先では、以前にこのプログでも書きましたが、アニュアルレポートの小型版のような株主通信を作っています。事業の成果や経営施策とその結果等について限られた紙面の中で可能な限り突っ込んだ説明を試みているものです。そのため、他社の株主通信に比べて説明部分が多く、写真やイラストをデザインしてレイアウトされているような株主通信に比べて親しみ易さの点では一歩も二歩も劣るものです。しかし、入り口を我慢すれば、中身は濃いことには自負があります。このような株主通信について、株主さんのアンケートを募ったところ、比較的高い年代で、投資経験が浅い人の支持が多かく、逆に否定的な回答をしたのは一様に投資経験の長い人でした。このことは、上に述べたひとつのモデルを間接的に証明していると思います。経済や企業の知識があって、それなりの見識を備えた人が、そういうものをベースに株式投資を始めた、ということに当てはまるのではないかと思えるのです。

今回の試みについて、上のような仮説をたてて始めるつもりです。そのときに検証すべきことは、今回の説明会でターゲットとしているような個人投資家は存在するのかということと、もし存在するとしたら説明会に来てくれるのか、ということです。実は、この中の後者に関しては、私自身危惧を持っています。おそらく、ターゲットになるような個人投資家は存在していて、一定の層を形成しているのではないかと思っています。しかし、その人たちに私の勤め先で、今回の試みをすることが伝わらないのではないかという心配です。もしもソニーやトヨタ自動車が行うということなら話題になり、マスコミが取り上げたりするので、すぐに伝わることと思います。そこで、考えられるのは、多少の時間がかかることを覚悟して、このような投資家の1人でも2人でも邂逅を期待し、後は口コミによる拡がりを待つということです。何かのんびりした話のように聞こえるかもしれませんが、既存の広告媒体や証券会社、あるいは投資情報会社等では、そういう人たちとの制度的な接点を構築できていない以上、莫大な費用を賭けられないとすれば、そういう一見遠回りのような方法しかないのではないかと、考えています。

実は、この方法がターゲットとして考えている個人投資家に繋がるための手段であるとともに、説明会から様々な可能性の広がりのための手段でもあるのです。これについては、次回で考えたいと思います。

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