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2012年8月26日 (日)

あるIR担当者の雑感(84)~信託銀行って本気で仕事しているの?(2)

私の勤め先では、この6月に某信託銀行のすすめにより従業員持株会ESOPを始めました。このあと、毎月、信託において自己株の買付を進めています。このようなインセンティブと言われるスキームは、ストックオプションもそうですが、会社の株価が上がることで、これを利用した人が収益を得るという仕組みです。従業員に対して行うということは、株価が上がれば、巡り巡って自分の個人的な利益になるわけですから、仕事に頑張ろうという動機付けとなるというのが建前です。

で、株価はどうかというと、例えば日経平均株価は、今年に入っていくら上昇したでしょうか。これを見ていると、株価ははたして上昇するのかと疑ってみたくなるのが普通ではないかと思います。とすると、インセンティブということで導入した、ESOPやストックオプションに関して、本来の目的である受けた従業員なり役員が株価上昇に向けて努力するという環境になっていないのではないか。つまり、インセンティブ導入の効果は上がっていないし、期待できないということになるわけです。未だ、短期的なところではありますが、導入は成功していないということです。この責任はだれが負うのか、と犯人捜しをするつもりは全くありませんが、直接には、これは資本政策の一部でもあり経営判断に属することなので経営陣ということになるわけですが、スキームを進めた信託銀行は責任を免れるのでしょうか。多分、契約書には免責条項が明記されているので、直接には責任はないということになるはずです。しかし、資本政策を進めているプロなら、時期とか売り込み先の状況を分析、判断して、顧客にとって有利なものになるという判断をしたからこそ進めているはずです。その判断が誤っていることは当然ありでしょう。人間の行うことですから。しかし、それなら、判断を誤った理由を説明する義務が、道義的にあるのではないかと、私は思います。顧客の資本政策にタッチして長年にわたり信頼関係を構築していかなければならないということなら、当然あってしかるべきだと思います。また、そういう判断をすることなく、進めたということなら、それは実質的な詐欺と言ってもいいのではないか、と思います。

私の勤め先で導入したESOPは5年という期間を設定しているので、今後、好転する可能性はあると思いますので、今すぐ、どうだと騒ぐのは野暮の極みでしょう。

しかし…、と思うのです。まともな経営者であるなら、上で述べたようなことは当然気になっているはずです。自らの経営責任に繋がるものです。効果が上がらない資本政策を強行したことで株主から責任を追及される可能性もあるわけです。このような場合、スキームを進めた信託銀行にとっては、ESOPを有効にするために資本政策を提案して、売込みができる絶好のチャンスであるはずなのに、なぜ、そういうことを行おうとしないのか。株価が上がらないのなら、株式分割で株主を増やしましょうとか、IRの支援を売り込むとかチャンスはいくらでも広がると思われます。

こういうことを考えていると、そもそも信託銀行とか銀行とか証券会社は、こういうスキームを商品として、上場会社に売り込んでいますが、スキームを届け出たり、書類を作ったりするという手続きだけはできる(以前にも、このブログで書きましたが、私の勤め先で契約した信託銀行はその手続きも十分にできませんでした)けれど、本来、どういうスキームなのかということが理解できていないのではないかと思えて、しょうがないのです。だから、事務手続きのミーティングの場で、「なぜ?」という質問に答えられない体たらくになってしまうのです。

だから、最近の株主総会でストックオプション議案が機関投資家に反対されてしまうようなケースが出てきていると思うのです。こんかいは、文句になってしまいました。

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