あるIR担当者の雑感(89)~個人投資家向け説明会の試み、後日談(3)
今日は、説明会でひとつの結果が出たことに伴う、波及効果について検討したいと思います。
波及効果については、いくつかの方向から考えられます。一つは社内的な影響です。個人投資家を招いて社内で説明会を開くというのは、家の中を見られるようなもので、経営者にとってはインパクトがあったようです。今回社長は海外での重要な商談の件で出張せざるを得ず、説明会には出られなかったのですが、準備段階で経過状況や、結果について、かなり気にかけていました。これは、機関投資家やアナリストといったプロだけでなく、個人投資家も具体的に目の前に現われてきたことで、市場というものをリアルなものとして感じられたのではないかと思いました。実際、話しかけられるようなところで、個人投資家を相手にするということで、投資家というものを自然と意識せざるを得ないものと感じられたのではないかと思います。経営の中で、株主とか投資家を意識するということは、従業員にとっても悪い傾向ではないと思います。株価というのは、色々な議論はありますが、市場の投資家の会社への評価が反映しているわけです。その点での自覚を経営者に促す機会として、この説明会が多少でも機能してくれれば、それは大きな成果と言えます。
また、工場見学で社内を投資家が集団で見学して回るということで、社内には協力を求めることとなりましたが、これまで、そういう経験がなく、社員が投資家と触れることは初体験だったので、協力依頼を社内各部署にお願いした時点で、各部署に説明している中で、投資家というものの存在を改めて意識したという社員が多かった。この会社が株式を上場していて、投資家が投資して株主がいるということをリアリティをもって知らしめることができたということは、社内の意識の上で変化をもたらしたと言えます。そして、このことは、今後IR業務を進めていく上で、社内の協力を仰ぐ際への好影響が期待できるのではないかと考えています。
波及効果として考えられるもう一つの点は、市場関係者に対するものです。私の勤め先は中小型株に分類される銘柄で市場での出来高があまりなくて、流動性が低いという評価を一般的に受けています。機関投資家とのミーティングの際などにも、そのことを指摘され、資本政策を確認されることがあります。その時に、IR活動によって投資家の底辺を広げて行こうと地道な活動をしているということは、即効性はないものの、会社の姿勢として一定の評価を得られるものと考えられます。そして、今回の試みは新しいことに対するチャレンジとして受け取られることができれば、会社の意欲とか姿勢を肯定的に見てもらえそうな可能性を考えられます。実際のところ、今回の説明会のことを決算説明会に出席してくれたアナリストや機関投資家に簡単にメールで報告をしたところ、興味を持ってくれた方が何人かいて、コメントや問合せをいただきました。そういう意味で会社のイメージに対して好影響となる可能性もあると思います。
ただし、これらのことは、この試みが一度だけでボシャってしまわずに継続し、ある程度の成果を上げたときに初めて現実のものとなるもので、現時点で実際こうだと言うのは時期尚早でしょう。
しかし、そう単純でもなくて、これから、この試みが継続し、徐々に拡大していくことが叶うかどうかについては、上で書いた市場での好印象というのか、一部でも関係者に興味や関心を持ってもらうことが、どうしても必要になってくると思います。このことは、今後の課題として、別の機会に改めて考えて行きたいと思います。
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