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2012年11月12日 (月)

畑村洋太郎×吉川良三「勝つための経営~グローバル時代の日本企業生き残り戦略」(9)

世の中は常に変化しています。それとともに事業を取り巻く制約条件や市場からの要求も変わります。この変化に対応するには、必要に応じてマニュアルなども変えて行かなければなりません。ところが組織の中で極端な形式主義や数量主義、管理主義がはびこると、この変化を無視したり、ないものとして扱って、結果として組織が大きなダメージを受けるということが起こりがちです。従来のやり方に慣れ親しんでいると、「前と同じ」という状態が非常に心地よく感じられます。しかし周辺環境が変化した後も組織が力強く生き残っていくためには、硬直化を防ぐための手を早く打つことが重要になります。しかし現実には、この種の対策がスムーズに進められるケースはあまりないようです。はいけいには変化を望まない人間の意識の問題があります。そして組織全体がこのような意識で動いている状態を、組織の「中間管理職化」と呼んでいます。ここでいう「中間管理職化」とは、仕事をする時にまず自分たちの組織の中のことを見てしまう状態のことです。その弊害は、周辺環境が大きく変化した時に一気に顕わになれます。たいていは組織全体が思考停止状態に陥り、周りで起こっている問題に対して無策で、一切抵抗できずに状況が悪化するのを茫然自失の状態で眺めるしかないということになりがちです。

日本のものづくりの浮上を妨げている企業組織の問題として、「技術者のおごり」についても触れておく必要があります。過去の成功体験があるので、技術者たちは、いまでも技術に強いこだわりを持っています。こういう人たちは「いいものをつくれば必ず売れる」と信じているので、従来のやり方をなかなか変えたがりません。不幸なことに日本の多くの製造会社では、過去の実績を評価されてこういう人が開発責任者等の重要なポストにいたりします。こうなるとなかなかやっかいで、技術者のおごりが組織に大きなマイナス効果を齎すことになります。未だは高い技術が以前のように大きな競争力にならなくなっているのです。消費者のニーズも多様化しています。技術は必要ですが、重要なのは技術を基に消費者の魅力ある製品を生み出していくことです。消費者のニーズを考えずに「いいものをつくれば必ず売れる」と安易に考えるのは、技術者のおごり以外のなにものでもありません。今の時代、ものづくりに携わる企業に求められているのは、消費者が望んでいる機能を持つ製品を、望んでいる価格で提供することです。いくら高い技術があろうと、消費者が望んでいないものは必要ありません。ましてそのような技術を消費者に無理やり押し付けるようとするなど論外。

生産技術でも同じようなおごりがあげられます。生産技術が強い企業では、どの材料を使うか、どの部品を使うかを生産部門のこだわりで決めているところがあります。こだわりの材料や部品を使うことが、その製品の競争力アップのために重要であればよいことですが、実際は単なるこだわりだけで、むしろそのことが価格を上げる原因になっていることがあります。実際は指して必要でない負担を消費者に強いているだけ、という可能性も高いのです。それが結果的に、当初の設計の意図を離れ、消費者にマイナスになるこだわりだとすれば、それはやはりおごりでしょう。そのような製品は当然、消費者から選ばれにくくなります。

ビジネスを成功させるための基本は、環境の変化、市場の動きを意識し、消費者のニーズに合った製品やサービスを提供することです。これはどんな業種でも同じです。ところが日本の多くの企業は、この基本を忘れているかのような動きを平然とします。それは消費者より、ライバル関係にある同業他社の動きを気にする姿勢に顕著に表れています。このように同業他社の動きを人一倍気にする背景には、前述したように、日本の企業が置かれている独特の環境、すなわち一つの産業に同業他社が沢山あるという特殊な状況があると思われます。そのためにしばしば消費者より同業他社に目が行きがちになるということなのでしょう。大企業の組織全体が「中間管理職化」して硬直化するという弊害を生んでいることを述べましたが、いわゆる「業界」ができると、今度は業界の中ばかり見ることで同じ状況がうまれてしまいがちになります。これが、いまでは企業の大胆な改革に進めない枷の一つにもなっているように見えます。

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