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2012年11月13日 (火)

畑村洋太郎×吉川良三「勝つための経営~グローバル時代の日本企業生き残り戦略」(10)

第6章 日本社会は企業に厳しいのか?

日本企業の浮上を妨げている二つめの枷は、日本社会に見られる様々な問題です。とくに現状に合っていない旧態依然の規制や制度は、企業の柔軟な対応を難しくする大きな枷になっています。

 

第7章 考え方が縮こまる日本

日本の企業の再浮上を妨げている三つ目の枷は、人々の考え方そのものです。昨今のように大きな変化を迎えている時代には、本来の要請から言えば、自由で柔軟な発想をする人が求められるはずです。しかし実際はそのような状況になっていないのではないかという気がしてなりません。それは人間の性質に起因するものもあれば、人々の考え方に影響を与えている周りの環境に問題がある場合もあるでしょう。最初に取り上げるのは、人間の性質に起因するものです。

人間には困ったことに、「見たくないものは見ない」「聞きたくないことは聞かない」「考えたくないことは考えない」「あって困ることはないことにしてしまう」「発生頻度が低いことは起こらないことにしてしまう」というところがあります。そして、これが本来は起こらない、不必要な事故やトラブルの原因になることが良くあります。誰でもそうですが、「従来と同じ」という動き方をするのは非常に楽です。慣れ親しんでいるから安心できるし、新たなことを考えるときの面倒もないからです。よほど困った状況になったり苦しいことに遭遇しないと、人間はできるかぎり従来と同じ道を進みたがるのはそのせいでしょう。そして過ちに気づき変えられるのは、「破綻をきたした時」というのが一つのパターンです。

周りの環境が人の考え方を縮こませる例として、例えばコンプライアンスの問題を上げることができます。コンプライアンスの本当の意味は「社会からの要請に柔軟に対応する」ことです。それが日本では「法令遵守」と誤訳され、その結果、企業の活動、人々の考え方にまで悪影響を与えているといいます。コンプライアンスを気にするようになると、どうしても「新しいことをやって、これがコンプライアンスに引っ掛かっていたらどうしよう」という方向に人の考えは向きがちになります。そうなると、どうしても無難な方に行かざるを得ません。ちなみに今の時代、無難な道が失敗への道へと続いていることが多いということは、言わずもがなです。

マニュアルにしてもそうです。組織が成熟し、マニュアルが整備されてくると、仮に状況が変わってマニュアルに書いてあることがすでに時代遅れなものになり、そこで問題が発生しても、「私はマニュアルに書いてある通り行動しただけだから悪くない」と考える人が出るようになります。これは本末転倒の話ではないでしょうか。こうしたことが続くと、その組織の人は「言われた通りにやる」「決められたことをやる」ことが一番大切であるという価値観に支配されるようになっていきます。そうした価値観が支配して、いまの大変化に対応できる人間が育つのでしょうか?

 

この後も続きますが、この本で面白かったのは第一部で、第二部、第三部と進むにつれて、つまらなくなっていきます。それは、企業の現場から離れることと、これからのことを考えると著述が一気に生彩を失うようです。どうやら、この著者たちは、分析するまではいいのですが、考察するのは苦手のようです。何か第一部は小気味よく批判的なことを書いていますが、結局それを書いている本人たちが、実は批判されるものに当てはまっていることに彼らは気付いているでしょうか。おそらく、それに気づいていないからこそ、第二部、第三部がつまらなくなると思います。この本で分析されていることは参考になりますが、それ以上に、この本の著者たちが「裸の王様」であることに気づいていないことの方が、私には他人事でないものとして、切実に読み取って行かなくてはならないと思います。結果論ですが、かれらは不誠実で無責任だと思います。

 

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