佐藤健太郎「「ゼロリスク社会」の罠~「怖い」が判断を狂わせる」(1)
日本社会は、長引く不況に苦しんでいます。今までなら思いもよらなかったような大企業の倒産、若者の就職難、うつ病の増加といった、暗いニュースが次々に飛び込んできます。いままでずっと羽振りが良かった百貨店や、広告代理店、テレビ局、新聞社といったマスコミ関連企業さえ、そういうに苦しくなっているのが現状です。今の日本の、何が悪くてこのような事態に陥っているのか。原因はもちろん単一ではないでしょうが、筆者は日本人の「リスク過敏症」が少なからず影響しているのではないかと思っています。
あらゆるリスクを丁寧に回避することで、自らひたすら縮みゆく日本─この構図は、特に震災後、ますますはっきりしつつあるように思えます。日本人は、そもそもこうしたリスク管理を苦手とする民族かもしれません。明治になるまで対外戦争をほとんど経験せず、内々の話し合いで事を済ませてきた我々にとって、正面からリスクを取り上げるという行為は、かなり難しいことに属するのでしょう。また日本人には、「悪いことを口にすると、それが実際に起きてしまう」という、「言霊信仰」が心の奥底に染みついています。これが、リスクを語ることを無意識に回避させることのかもしれません。もちろん、避けられるリスクはされるに越したことはありません。
しかしある面では、その心理は生産者を苦しめるばかりか、消費者自身の首をも絞め、とかも実際には、必ずしも高いレベルの安全には繋がっていません。それがもたらす経済的、身体的損失は、今や計り知れないほどになっています。
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