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2012年11月11日 (日)

畑村洋太郎×吉川良三「勝つための経営~グローバル時代の日本企業生き残り戦略」(8)

第2部 日本企業の浮上を妨げる三つの枷

第5章 成熟した企業組織が危ない

ここでいう三つの枷は、企業組織、社会そして人々の考え方に見られる様々な問題を指しています。まずこの章では企業組織に見られる枷の問題から考えてみることにします。

日本企業の浮上を妨げている企業組織の問題として、まずは経営者の姿勢をあげなければなりません。良くも悪くも組織が進む方向は、トップである経営者が決めるものです。トップの役割として、自分たちが置かれている環境が大きく変わった場合には当然、組織の進む方向も大きく変えるような新たに手を打たなければならないこともあります。ところが現実には、こういう従来と大きく異なる方向に進むような思い切った決断がなかなかできない経営者が多いのです。これは日本企業のほとんどで見られる問題です。製品開発の期間が大幅に短縮されて、なにごともスピーディに対応しなければならないのが、激しいグローバル競争にさらされている現代の特徴です。従来のように、まずライバル企業の動きを観察し、それからじっくり自分たちの動き方を決めるようなやり方だと、それこそすぐに取り残されてしまう危険があります。

ところが、日本の経営者の多くがこの決断を出来ないのです。組織の命運を左右する大きな決断がなかなかできず、周辺環境が激変している場合でも結果として旧態依然のままの運営を続けているというケースが多いのです。日本の経営者が決断できないのには、企業組織の問題が大きく関係しています。しかしそれだけでなく、経営者自身の姿勢にも原因があります。例えば日本では「経営者は孤独」といわれています。それが意味するのは、経営者の役割として、目先の損得に左右されず、最後は自分で決めなくてはいけないからというようなことでしょう。しかし、その言葉には大きな誤解があるのです。確かに最後の瞬間には一人で決断する必要があるかもしれません。しかし、こういう時に大切なのは、決断をする時に必要になる情報の収集です。決断の方向を決める材料になる各種の材料まで一人で行うのは到底不可能です。決断は「賭け」とは違います。決断をするための材料をきちんと集めることが大前提です。逆に組織にとって最悪なのは、経営者が「裸の王様」の状態になることです。仮に経営者が孤独になって、外の世界とのつながりもなく、身内からも組織の行く末を左右する大切な情報が一切耳に入らなくなったとしましょう。現実にこのような状態に陥っている経営者はたくさんいますが、これでは組織として環境の変化に迅速かつ柔軟に対応することはできません。そもそも情報不足は、意思決定の遅さにつながります。その意味では、経営者は絶対に孤独になってはだめなのです。理想的な状態は、経営者が外の世界をしっかりとつながりを持って、外部から組織を見ている信頼できる人の意見をいつでも聞ける状態を作ることです。また自分の手となり足となる信頼できる部下を持って、組織の未来を左右する重要な情報が瞬時に入る体制を築くことができたら、必要な決断が行い易くなるでしょう。

組織には、成功して大きくなるほど動きが硬直化するという特徴があります。これもまた日本企業の浮上を妨げる大きな枷の一つになっています。組織の硬直化のパターンとしては、長く活動しているうちにだんだんと三つの「官僚主義」がはびこっていくのが一般的です。ここでいう三つの官僚主義というのは、「形式主義」「数量主義」「管理主義」のことです。いずれも大きな組織でよく見られるものです。形式主義の典型は、社内だけの書式が細かく定められたりすることです。そうなると、中身よりも体裁をつくる作業に時間が掛けられるようになります。次の数量主義は、組織の中で必要以上に数字による評価に重きを置くことをいいます。数字による評価は元々絶対的なものではないので、組織の中でこれが極端に重視されるようになると、次第に様々な弊害が見られるようになるのが常なのです。見かけの数字を良く見せるためのインチキが横行して組織の力が気づかないうちに落ちていたり、本来は数字で判断できない重要なことがばっさり切り捨てられたりといったことが起こるからです。これが数量主義の横行の弊害です。最後の管理主義の弊害は、たとえばマニュアルへの過度の依存形骸化などのことです。極端なマニュアル依存になると、組織全体がマニュアルなしには判断できず、動くことができなくなってしまいます。これが管理主義の弊害の典型例で、これが進むと確実に組織は弱体化の方向に向かいます。こうした管理主義の弊害は組織の長である経営者にまで及んでいることがありますが、この場合は最悪です。環境の変化によって組織の存亡に関わる問題が発生しているのに、思考停止状態になって状況を打開するための手がなに一つ打てないということも起こり得るのです。

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