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2012年12月11日 (火)

手島直樹「まだ「ファイナンス理論」を使いますか」(2)

「確かに業績が悪化した場合、一般株主が業績に影響を与えることはできませんが、ほとんどのファンドは、わざわざモノを言うよりも、さっさと売却を選択してしまうでしょう。議決権があろうがなかろうが、実質的には変わらないはずです。種類株はコーポレートガバナンスを軽視するものではなく、多くの株主の実態に適したものだと私は考えます。種類株は、「口を挟まずに、好き勝手やらせてくれれば儲けさせますよ」という経営者からのメッセージだと考えればよいのです。とくに、新興IT企業は創業者がすべてであり、一般株主は創業者を信じ、そこに賭けるものでしょう。ですから、だれが本物なのか見極めることが、投資家の腕のみせどころになります。多くの投資家に求められるのは、経営を変えることではなく、高い将来性を持つ会社を見つけ出すことです。そうした会社の株式を安い時に買って、高い時に売ればよいのです。売却というガバナンスのスタイルが、多くの投資家に一番適しているスタイルだと思います。プライベートエクイティのように投資先とは運命共同体ではないのですかに、業績が悪くなれば見捨てるという選択をするのが合理的ではないのでしょうか。」

「日本では終身雇用のケースが多く、数十年間社内で競い合い、様々な視点において高い評価を得てきた人材が選抜され経営者になる仕組みになっているはずです。こうして選別された人材が不正をするとなると、社員全体の質が低いか、経営者選抜のプロセスに問題があるかのどちらかとなります。しかし、どちらの理由であっても、問題が起こった時の尻拭いを取締役会にさせるのは筋違いではないでしょうか。取締役会の役割は企業価値を創造することであり、道徳を経営者に教えることではありません。取締役会がコンプライアンスに主眼を置かなければならないような企業は、いずれ市場からの退場を迫られることになるはずです。ガバナンスの問題解決は、決して難しいものではありません。経営者が優秀であれば、全て解決すると思います。ガバナンスの良し悪しで会社がよくなるのではなく、優秀な経営者がよい業績を上げれば会社のガバナンスが自然とよく見えるのです。監査役設置会社であろうが、委員会設置会社であろうが、社外取締役がいようがいまいが、体制は何でもよい。何を選択しようが、優秀な経営者はその選択を正解にしてくれます。トヨタ自動車やキャノンに社外取締役は1人もいません。キャノンは現場の実態を熟知してこそ、より実効性、効率性のある意思決定および適切な監督を行えると考えています。社内に優秀な人材や専門家が多くいれば、全員社内取締役でもいいのです。きちんとした経営が行われて業績がよければ、誰も文句は言いません。カルロス・ゴーンは、コーポレートガバナンスの講演会でこうコメントしていました。「優秀な経営者を選び、その経営者を徹底的にサポートするのがガバナンスである」こう考えると、経営者をサポートできる人物であれば、社内取締役でも社外取締役でもどちらでもよいことになります。見方を変えれば、優秀でない経営者の場合は、取締役会がどうコントロールしようが、チェックしようが、モニターしようが、無駄な努力ということになります。バフェットは、「馬が老いぼれならば、どんなに優れたジョッキーが騎乗しても勝てない」と言っています。いまや株主の多くは資産運用を目的とするファンドであり、株価のパフォーマンスを最優先します。投資先の業績改善に向けて行動するよりも、株価が上がらないのなら売るという行動をとることが多く、株主からのガバナンスは期待しにくくなっているのです。ですから企業にとっては、外部からのガバナンスを必要としない優秀な人材を経営者に育て上げることが最優先の課題です。取締役会のあり方を考える前に、採用基準や昇進基準を徹底的に見直す必要があります。丹羽宇一郎氏は、優秀な経営者は「自律自制」ができると指摘しています。収益や株価が競合他社と比較して劣ることがあれば、即座に手を打つ。その際、社外であれ、社内であれ、取締役の意見を最大限に活用するでしょう。業績を長期にわたり悪化させ、社外取締役に解任を迫られる「他律」を持つことはないのです。経営者をコントロールすることが構造上困難である現実を考えれば、そもそもコントロールが不要な「自律自制」型人材を育成できるかどうかが企業価値を決定すると言えるでしょう。

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