あるIR担当者の雑感(99)~IRのホームページを考える(1)
一昨年から、私の勤め先で実際に携わっているIR業務で課題となっていることを考えながら、ここにそのプロセスを書き込んできました。時には、まとまったことを考えたりすると、何回かに分けて連載のような形で書き込んだこともありました。説明会のことや、株主通信、個人投資家向け説明会のこと等についてでした。それらのことを考え、そして実際に業務を進めていくと、これに全部と関連して、しかもなかなか手をつけられないものがありました。それがホームページです。以前に、日興IRのホームページ表彰に対する疑問を書き込んだことがありましたが、では、自分はこうだというポジティブなものはなかなか、打ち立てられませんでした。その間もああでもない、こうでもない、と色々と考えましたが、まったく進みませんでした。その理由(弁解?)のひとつとしてお手本がなかったということです。そんなことを言っても、上場企業のホームページが何千社もあるではないか、といわれそうですが、でも、どの企業のホームページも同じに見えて面白くないのです。個人で運営しているホームページやプログが個性豊かで、更新が楽しみなところが多いのに、IRページはどうしてそういう興味を掻き立てる魅力を感じないのか、不思議なほどでした。それで、一般的というのか、数多あるIRページは反面教師のように映っていました。だって、私が投資家として、ある会社に何となく興味をもってウェブで検索してホームページを訪れてみて、整然としているようだけれど、一体この会社は何を見る人にアピールしたいのか何も伝わってこないと、その会社のことが分からないひとがインデックスからどこのページを見ていいのか分らないじゃないですか。それで迷っているうちに飽きてしまって、じゃいいや、という気になってしまう。そうすると、二度とそのページを訪れることはない。私の見たIRページはそういうものばかりでした。優秀IRページと表彰されたページも一部を除いて、そんなものばかりでした。
そんなことを考えていると、企業のIRページというのは、そもそも最初から語義矛盾なもので不可能なものではないかとも考えました。それで袋小路にはまり、ずっと抜けられないでいたという状況です。
では、そんな状態で、ここで何が書けるか、と不審に思われるかもしれません。袋小路からの脱出はできていませんが、とりあえずの現状は冷静に分析できて、原因も考え始めることができたということからです。その理由は、うじうじ考えていてもしかたがなく、いつまでも放っておけないので、ホームページの作業に取りかかり始めたことです。一旦作業を始めてしまうと、作業を進めなければならず、実際上の作業課題の解決を考えことに迫られて、結果として個別の細部からホームページを考えるという視点を得ることができました。これから、この作業報告かたがた、そのときに考えたことを何回か書き綴ってみたいと思います。
なお、ここで最初にことわっておきますが、ホームページの作業に関しては、ホームページ作成業者のような人たちには一切お願いしていません。ホームページの最初の企画やページの体裁、内容を考えたり、そして実際ページ作りやウェブへのアップロードもすべて他人を介さず、自分で行いました。その結果、色々なことを自分なりに考え、発見することができました。そのため、私の作ったページは他社のページに比べると、かなり拙いページになっていますが、一見して明らかに他社のページとは違うということだけは自信をもって言えるものにはなっています。
なお、ホームページを業者に頼まなかった理由は、一つとして予算がなかったことがあり、これが一番大きいです。そして、何社か、そういう業者の売込みを受けたり、話を聞いたりした結果です。業者の人の話を聞いた印象ですが、基本的に知識がないのではないかということと、本気でやっていないのではないか、というのが明らかに感じられたためです。たまたま、私が話をきいた数社がそうだったのか分かりませんが。かれらが、一応提案はもってきますが、どうしてそういう提案をしてくるのか、こういうページつくりが良いですよ、と勧めてくるのはいいのですが、その理由をキチンと説明できる人は誰もいませんでした。ほとんどの人はホームページとはこういうものだ、というところで説明が止まってしまい、それから先の理由に詰まってしまうのでした。そういう作り方があるのはいいとして、それがどうして私の勤め先にフィットするのかの理由など、考えたこともないという感じでした。まるでプラットフォームにルーティンで企業についての何らかの情報を手際よく流し込んで、効率よく出来上がりというパターンが見え見えに思えて、これでページを作っても、面白いわけがないと思ったためです。次回以降、私がページを作りながら色々なことを考えざるを得ないところに何度も追い込まれましたが、その時考えざるを得なかった疑問を業者の人にぶつけて見ても、おそらくは答えられないのではないかと思います。別に自慢するわけではありませんが、いかに作るかということは、何を作るかということと密接に関連していて、それぞれが相互に影響することに、私はこの作業のなかで初めて気が付いて、この作業のもつ本質的な効率の悪さを実感したためです。多分、作業を効率化させるには、そういう課題に触れないようにすっ飛ばしてしまうことがコツではないかと思います。
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