あるIR担当者の雑感(105)~IRのホームページを考える(7)
前々回で紹介した個別の項目について、それぞれ考えていきたいと思います。まず、会社概要についてです。実は、このページは未だに完成していません。その他のページが全部出来上がって、最後に着手するつもりでいます。だから、作っていないものについて、述べても確かなことは言えないので、簡単に構想だけを書くことにします。一般にこの項目では、社長のあいさつがあって、基本的な情報、会社の名前や住所、沿革や役員構成というようなものが一覧で記されていることが多いようです。それなら、別に最後に作るようにことをせず、さっさとページを作ってしまえばいいのです。しかし、それをしないというのは、別のことを考えているからです。この会社はどういう会社かということを紹介するために、とくに投資家に向けて自己紹介するときに、今言った情報はなくてはならないものなのか、ということなのです。むしろ、最初に紹介すべきことというのは。この会社はこのようにして投資してくれた人に対してリターンを返しているというモデルを提示することではないかと考えています。それが企業の方針として具体的で、投資家にも分かりやすいし、そのモデルを基本に前々回に列記した項目が枝葉としてあってリンクを通じて、その枝葉の興味を持てそうな詳細の説明に移動できる、というものを考えています。企業の中にはビジネスモデルを作っているところはありますが、こういった投資リターン、カッコよく言えば価値創造モデルをつくって開示しているところはほとんどないのではないか。だからお手本がないのです。この項目については、この程度にしておきます。
「事業概要」については、各社のホームページでも説明のページがありますし、あって当然と思われるページです。しかし、ページの作り方は、そういうものとは結果として、違っているのではないかと思いました。多く見受けられるのは、その事業とはどういうものか、メーカーならばどのような製品を作っているのかということを紹介していることが多いようです。私の勤め先は、基本的にこの項目について、掲載する内容は機関投資家のミーティングやアナリストの取材で質問された事項を中心に組み立てました。つまり、投資する場合に事業について押さえておきたいことを情報として提供することを目的として、それに沿う書き方にしました。例えば、製品についての説明、どのような製品を作っているかよりも、その製品の市場とか競合している企業とか、競合に比べて強みとか、最近の業績とか、事業への貢献度合いとか、そういうことを中心に説明するようにしています。この中で、例えば、最近の業績の説明は、決算発表に伴うハイライトや補足説明ページとリンクさせています。また、製品の強みは「事業の特徴」のページにリンクされています。また、それぞれの製品は相互にシステムとして関連している場合には相互にリンクされています。そして、製品を作るには技術開発の結果開発されたものなので「技術開発」の項目ともリンクが張られています。また、製品自体のスペックとか外観とかそういうものは、ユーザー向けのカタログページの製品紹介にリンクを当然貼られています。ひとつの事業では製品は一つではなく複数あるので、それぞれの製品の説明が、そうなっており、同じように、もっと大規模に各事業の説明が為されています。多分、ホームページ全体の中でのボリュームも一番多くなっています。
このページを作りアップしてから分ったことですが、このページを訪れる人は、トップページから経路に従って訪問して来るケースは寧ろ少ないのです。多くの場合、例えば、製品名で検索して、その製品のページに直接訪れているケースが多いのです。また、最近は、そのページ直接リンクが外部から貼られているようで、そこを伝って訪問する人が徐々に増えてきています。そういう実績を見てみると、英国IR協会のガイドラインは、私の勤め先には、当てはまらないようなので、参考としないで、反面教師として適当に距離を置いて扱うのが頭のいい付き合い方だと思うようになりました。
以上が、大抵の企業のページでもメインとなっているページについてです。
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