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2013年1月26日 (土)

あるIR担当者の雑感(109)~IRのホームページを考える(11)

「FAQ」はホームページの中で、最も力を入れたページです。代表的な質問と、それに対する答えというのが「FAQ」のページになっています。機関投資家やアナリストの方に聞いてみると、意外なことにFAQのページはよく見るようです。私としては少し驚きましたが、彼らは共通して不満を感じていることも分かりました。その理由は、どこの会社でもいいので、とりあえずFAQのページを見てもらうと一目瞭然です。つまらない。ほとんど中身がないのです。

最初にFAQというのは代表的な質問と、それに対する答えと言いました。代表的な質問ということは、このページを訪れる人なら誰でも質問するような質問ということではないかと思います。このFAQを訪れる人が多いというのは、個別の説明を探すのは面倒だから、多くの人が訊くような質問なら、このページに出ているかもしれないと期待してのことではないかと思います。しかし、実際に各社のページを見てもらうと分かるように、そこで質問と回答が載せられているようなことは、会社の設立年月日とか、決算日とか、発行済み株式総数とか、株式関係の手続きの問い合わせ先とか、多くの人が質問したいこととはズレている、ハッキリ言えばあまり重要ではない、端的に言えばどうでもいいようなことが多い、という状態にあると思いました。

そこで、訪問者が多いことなどから、他の会社と反対の発想で、会社のアピールをできるページとして積極的な位置づけをしました。つまり、代表的な質問ということで、会社について、先ず知りたいことということを、逆転の発想で、会社から訪問する人に先ず知ってもらいたいことを並べることができるページにすることができる、ということです。ただし、訪問者が知りたいことと、会社が知ってほしいことが、全く食い違っていたらお話になりません。そこは、訪問者が知りたがることに、寄り添うように会社が知ってほしいことを出していく、というやり方には注意しました。また、訪問者が知りたいことは、会社のホームページの項目を分けた分類とは無関係にあるものなので、言ってみれば、項目の分類によって載せにくくなってしまった事項をここで載せることもできるわけです。例えば、会社の設立年月日ということを、少しズラして、会社設立の経緯とか、その時創業者はどのような思い入れで会社を始めようとしたのかとか、それが現在の経営にどのように生かされているのか、といった会社の経営の特徴をある意味で側面から説明することにもできるわけです。

そう考えると、FAQでだからこそ、会社が話すことができることは沢山あります。そして、質問の項目は機関投資家とのミーティングの時の質問される最大公約数とか、初回のミーティングで必ず質問されることとか、まずはそのようなところからスタートして、徐々に追加していけば充実したものになってきます。私の勤め先のFAQで取り上げている質問は、代表的なものは次のようなものです。

1.会社について

・この会社を投資対象として見た場合の特徴

・社名やロゴマークの由来

・経営理念、経営方針

2.会社の沿革

・会社設立の経緯

・設立以来、どのような発展を遂げて来たのか

・海外進出はいつごろから始めたのか

3.人と組織

・経営者はどのような人か

・従業員構成

・社員はどのようなタイプが多いか

・社内の雰囲気は

・人事や組織戦略は

4.財務政策

・財務政策の基本方針は

・総資産の中で現金の比率が高いが

・最適資本構成をどう考えているか

5.株式・配当

・株主構成は

・配当の方針は

・株式市況に対する考えは

6.IR、開示

・IRの基本方針は

・説明会は行っているのか

・説明会では、どのような質問が出て来るのか

7.その他

・コーポレートガバナンス、環境への取組、CSR

8.事業について

ここにあげた質問事項は一部ですが、ページを訪れる人が訊く代表的なことになっています。これだけでも、とりあえず各社のホームページにあるFAQの比べてみてもらえば、違っているのか分かると思います。この質問項目以上に回答に力を入れました。例えば、IR開示の質問への回答では、説明会の毎回の出席人数、その内訳(アナリストや機関投資家の出席に人数)まで、細かく説明しています。これは、ミーティングの時に興味を持ってくれた人が必ず聞かれることで、このような情報を開示している企業は他にないと思うので、この部分を読むだけでも、このページに来る価値はあるのではないか、と手前味噌ですが、あります。ここにあげたものの全体的な傾向として、会社の姿勢とか方針とか、つまり、会社がどう考えているのか、ということを主に出しています。

実は、このようなことを項目として説明をしていくと、押し付けがましくなってしまいがちなのです。ところが、質問に答えるという形式にすると、押し付けがましさは薄くなり、あまり気にならなくなります。そして、質問への回答という形式はしゃべるような語り口になるため、親しみやすい感じとなり、受け入れやすくなるという効果もあります。説明の場合には事実を説明するという一方で、質問と回答はインタビューをうけるように訊かれたことをざっくばらんに話すという色分けをできる。その中で、他にない情報を多く入れこんでいくようにしているので、かなり充実したものになっている。ホームページへの訪問者と会話するような感覚です。

もちろん、回答の中で参照できる説明があればリンクを貼って説明ページに適宜とばすように設定してあります。だから、一つの質問だけでもみようとすると、そのページだけではおさまらず時には外部の含めてさまざまなページにリンクを伝って移っていくことになります。

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