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2013年2月 4日 (月)

あるIR担当者の雑感(114)~アナリストレポートは市場の財産

前回、アナリストの作成するレポートについて思い付きを書きましたが、もう一回分だけ、その思い付きの妄想にお付き合いください。前回、アナリストの作成するレポートが、もっと広い範囲で活用できるのではないかということを書きましたが、今回は、その広がりを時間的な広がりとして考えてみたいと思います。端的にいうと、アナリストのレポートの資料的価値を尊重して、統合的なアーカイブあるいはデータベースのようなことができないか、ということです。他の分野で言うと、雑誌の記事を整理して保管している大宅壮一文庫のようなものがあったらいい、という思い付きです。

仮に、私が、ある会社の投資を考えようというときに、長期的な投資を考えようとすれば過去に遡って実績や評価を知ることができるのは、ありがたいことです。また、複数のアナリストが過去にレポートを書いていれば、今なら証券会社ごとに調べてレポートを探さなくてはならない。それに、ある会社には、どのくらいのレポートが書かれているのか確認しようがないのが、現状ではないかと思います。これについては、もともとレポートは証券会社が顧客に銘柄を推奨するとか、投資している銘柄の現状を報告するということが目的であるので、証券会社の営業上の制約が当然あると思います。しかし、それは前回も書きましたが、そのような営業上の効果が期待できるのは、一定の限られた期間のことで、その期間を過ぎてしまえば、経済情勢や株式市況が絶え間なく速いスピードで変化しているため、時代遅れになってしまう。つまりは、営業上の効果は短い期間しかきかない、というのが正直なところではないでしょうか。ということは、作成後1年経過したとか、次のレポートが出たという時点で、そのレポートの時期に即した有効性、つまりは銘柄を推奨するような有効性は著しく減ずると言っていいのではないかと思います。そのような場合、レポートはしまいこまれ、紙の場合は一定期間を過ぎれば破棄されるのではないか。そこで、そのような一定期間経過後のレポートを証券会社から独立したような機関、例えば証券取引所とか証券業協会とかアナリスト協会とかIR協議会というような公益的な組織が、すべての証券会社からレポートを提出させて、整理して管理保管するようなことはできないか、などと思ったりしました。

投資をしながら投資先の企業を深く理解したいと考えるような投資家(私は、こういうタイプの個人投資家は今後増えていくと思っています)、あるいは企業の側でも自社のことが書かれたレポートを網羅的に見ることができるのはありがたいと思うし、また研究者や学生、ジャーナリストなどにとっては大きな資料的価値があると思います。このような開かれた公開の場を持つことによってレポートがもっと広まるのではないかと思います。そして、何よりもまして、レポートを作成するアナリストに対して資するところが大きいのではないか、と思います。というのも、自分の作成したレポートが資料として後世に残り、人々がそれを見に来るということになれば、レポートを作る姿勢が変わって来るのではないか。後世のレポートを見る中には、同業のアナリストがいる可能性は高くなるでしょうから、そういう目を意識することになる。また、ある会社に対して数人のアナリストがレポートを書いている場合、そのようなところに一括整理保管されていれば、見る方はその複数のレポートを当然読み比べることになるでしょう。そこでは、比較されることによってレポートの評価が自然とされることになってくるでしょう。アナリストにとっては負荷がかかってくるでしょうか。でも、こういうことが可能になったとしたら、日経という一企業がやっているアナリストランキングのような、ひとつの傾向がはっきりとしている評判ではなくて、もっと広範なレポートの評価によってアナリストを評価するというようなこと、「年間ベスト・レポート」とか、そういうことも出来るのではないか、などと思ったりしました。

私の個人的な思いつきですが、レポートを読んでいると、単に銘柄の推奨だけ(これはこれで素晴らしいものです)にとどまらない、業界についての知識を教えてくれる啓蒙的なものや、経済に対する鋭い切り口だったり、企業の経営論だったり、一時的な情報として流されてしまうにはあまりにも惜しいと思われるものが沢山詰まっているからです。

そうしたら、証券会社でも資料の管理という管理業務をアウトソーシングできるわけだし、場合によってはそのアーカイブなりデータベースの運営手数料を利用者から徴求すればコスト負担を軽減できる。デメリットだけではないと思います。

2回も続けて妄想を書きました。未だ正月気分が抜けていないかもしれません。

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