ウォーレン・バフェット「株主への手紙」2012(3)
本質的なビジネスの価値
チャーリーと私が本質的なビジネスの価値についてお話しするのと同じほど、我々はみなさんに正確にバークシュー株式の数についてお話しできません。しかし、我々は2010年の年次報告に、3つの要素を載せました。その一つは質的で、我々がバークシャーの本質的な価値を見ることができるキーポイントと信じているものです。その議論は104ページから105ページに再現されています。
ここに、2つの量的要素の最新版があります。2012年に、我々の1株当たりの投資額は15.7%増えて113,786ドルになりました。また、保険と投資以外の企業からの我々の税引き前利益も、15.7%増えて8,075ドルとなりました。
1970年以降、我々の1株当たりの投資を毎年倍加する19.4%の率で増やしてきました。そして、我々の1株当たりの利益は20.8%の速さで増えました。我々の、この2つの価値の尺度と非常に近い割合で42年間という期間にわたるバークシャーの株価が増加したことは、偶然の一致ではありません。チャーリーも私も、この2つの尺度の両方が増加してほしいと思っていますが、我々は常に営業利益をつくることをより強く求めています。
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さて、我々の事業の4つの主要なセクターを見ていきましょう。そのセクターそれぞれには他のセクターとはかなり異なる貸借対照表と収入の特徴があります。したがって、それらを一緒くたにしてしまうと分析できなくなります。そこで、我々は、これらを4つの別々のビジネスとして説明します。これはチャーリーと私も、これらをこのようにみているからです。
保険業
最初に保険を見ていきましょう。これは、バークシャーの中核事業であり、この数年にわたり我々の成長を引っ張ったエンジンです。
損害保険(P/C)は前払いのプレミアムを受け取り、後で請求に対する支払いを行います。極端な場合、特定の労災補償事故のような場合は、支払いが数十年間延びることがあります。このような、今現金を受け取り、支払いは後になるモデルでは、我々の手元に多額の「フロート」と呼ばれる現金が据え置かれることになります。最終的には、そのお金は我々の手元を離れることになるのですが。一方、我々がこのフロートを投資に振り向けることで、バークシャーは利益を得ることができます。ここの方針や主張は行ったり来たりしますが、我々が抱えるフロートの総額はプレミアムボリュームに関して安定しています。その結果、我々のビジネスは、フロートに応じて成長しました。我々がいかに成長したかは、下に表しています。
昨年、我々のフロートは横ばいか、将来は少し落ち込みそうであると皆さんに話しました。我々の保険のCEOは、昨年のフロートを25億ドル増やして、それが間違いであることを証明してくれました。私は、今度は2013年には更なる増加を予想しています。プラスの面ではGEICOのフロートは、ほぼ間違いなく増加するでしょう。しかしながら、国家賠償の再保険部門では、たくさんのランオフ契約を保持しており、これらのフロートが不安定で落ち込む可能性があります。我々が将来のフロートの低下を経験するとしても、それは非常に段階的で、数年で2パーセントを以上にはならないでしょう。
プレミアムが我々の費用と最終的な損失の合計を上回っていれば、フロートが産み出す投資収益を加え、我々は引受業務利益を計上します。このような利益が産み出されるとき、我々は自由なお金の運用を喜びます。さらにこれを増やしながら、後の支払いを待ちます。それは、皆さんがローンを借りて、銀行がその利息を払ってくれるようなものです。
残念なことに、このような幸福な結果を成し遂げたといいう保険業者の願望は、激しい競争を引き起こします。大きな引受業務損失を起こす損害保険会社があるため、ほとんどの年に競争は活発です。例えば、スティトファームは、わが国最大の保険業者であり経営があまり良好でない会社ですが、2011年末で、この11年のうち8年は引受業務損失をまねきました。(2012年の彼らの会計報告は、また使い物になりません)保険でお金を失うにはたくさんの道があり、保険会社は新しいものを作り出す才能に長けています。
この報告書の最初のセクションに見られるように、我々は10年連続で引受業務利益を上げてきて、この期間の税引き前利益の合計は186億ドルにも達しました。我々は、これからも、ほとんどの年に収益を上げ続けるだろうと信じています。我々が達成できたしたら、それは我々のフロートがコストゼロよりもむしろ収益を産み出し続けるからです。
それで、この魅力的なフロートはどのような我々の本質価値の計算に影響するのか?我々のフロートはバークシャーの帳簿価格を計算する際には負債として完全に差し引かれます。ちょうどそれは、我々が明日払わなければならなくて、それを補充するものがない時のように。しかし、それはフロートを表示するには誤った方法で、代わりに回転資金として見られるべきです。フロートがコストを産まず、長く存続するならば、この負債の正しい価値は会計上の価値よりはるかに低いです。
この誇張された負債を部分的に相殺するのは、資産として帳簿価格に含まれる保険会社に対する”好意”に起因する155億ドルです。実質的に、この好意は我々の保険業務でフロートを産み出す能力の価格を意味します。しかしながら、好意の費用は本質的価値とは関係がありません。もし、保険ビジネスが大規模で持続的な引受業務損失を生み出してしまうのならば、それに起因する好意資産は、当初の導入コストがどれだけかかっていても、意味がないと考えざるを得ません。
幸いにも、バークシャーはそうではありません。チャーリーも私も、我々の保険業務の好意の本当の経済的価値は、同様の品質のフロートを購入することで測ることができますが、歴史的な繰越価値を越えていると信じています。我々のフロートの価値というのは、バークシャーの保険ビジネスの本質的価値が帳簿価格を大幅に上回ると信じている理由です。
無料のフロートが、P/C事業全体のために期待される結果ではないことを、もう一度強調させて下さい。我々は、保険の世界で多額の”バークシャー品質”のフロートがあるとは思っていません。2011年までの45年間のうち37の年で、産業プレミアムは保険請求を賄うには不十分でした。従って、具体的な資産による産業界の収益は、長年にわたり、アメリカの産業全体の平均的な収益に遥かに及びませんでした。
さらに不快な現実は、この産業の見通しの不透明さをつのられます。保険収入は、現在は、「レガシー」債権ポートフォリオがこの数年(おそらくは、これから長年)で再投資された場合より高い利回りとなるから、得ています。今日のポートフォリオは、実質的に減耗性資産になっています。保険業者の収益は保険が満期となり更新される時に大きな痛手を受けることになるでしょう。
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