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2013年3月 6日 (水)

熊代亨「ロスジェネ心理学~生きづらいこの時代をひも解く」(13)

私達はニュータウンで生まれ育ち、スタンドアロンに自己愛を充たす処世術にすっかり慣れた世代です。そして、自己愛を求めすぎてしまいやすいパーソナリティ傾向を身に付け大人になった世代でもあります。私達が生まれて30年以上が経ちましたが、私達を自己愛パーソナリティ傾向へと特徴づけた社会システムや生活環境は、30年前と変わっていません。それどころか、ニュータウン的な生活環境は人口数万人程度の地方都市にまで広がり、雇用システムは流動化する一方です。ということは、自己愛パーソナリティ傾向に育った私達が、似たような環境下で今度は子育てをする側に回った、ということです。私たちの世代の場合、自己愛パーソナリティ傾向が例外ではなく、典型になったなかで子育てが営まれているわけですから、平均的な環境を与えられた親と言えども、子どもを介した自己愛充当を優先させてしまう確率は決して低くはありません。

そして、ネグレクトや児童虐待の件数は、平成10年あたりから増え続ける一方で、減少する気配はありません。こうした不幸な子ども達の大半は、地域社会や親族といったセーフティネットに守られていませんから、子どもの側には逃げ道がありません。現状では、児童相談所や警察の介入にも限界があります。私たちの世代が直面しているメンタリティ上の問題は大きなものですが、そんな私達の世代によって育まれる次の世代のメンタリティもまた、大きすぎる問題に曝されているといわざるを得ません。

 

それと、現在の子育てのスタイルをも子どもの自発性の成熟といった観点から見直す必要もあると思います。親の管理性を重視した子育ては、学力、従順さを身に付けるには向いているかもしれませんし、セキュリティ面でも優れています。しかし、遊びすら大人に与えられるままの放課後を過ごすようでは、子どもの自発性はますます育ちにくく、リモコンロボットのような青少年がさらに増えてしまうでしょう。また、コミュニケーションの経験蓄積という意味でも、放課後に占める塾や稽古事の割合、一人遊びの時間の割合が増えるほど、同世代の友達とのコミュニケーションの経験蓄積の絶対量が不足しています。親のためでもなく、先生のためでもなく、まず、現在の自分自身の満足や好奇心を充たすために何かを頑張る・何かを探せる─そういう体験を積み重ねていない子ども時代を過ごした人々が、思春期以後に自発性や好奇心に満ちた人物になれるものか、私には疑問でなりません。

ただし、現時点では子供に自由時間を与えるだけでは問題解決になりません。自分の家の子どもに自由時間を与えただけでは、子ども集団で遊ぶ場所も、遊びをクリエイトするチャンスも、それ程得られないからです。ニュータウンでは、大人の用意した場所で行儀よく遊ばなければならないのですから。そしてニュータウンの平均的な公園では、面白い遊びをクリエイトする場としては変化や起伏に乏しすぎるのが現状です。

 

この数十年間で、日本人は自己愛やアイデンティティを追求することに慣れていきました。そのかわり、誰かと一緒に暮らすことや世代を超えて一体感を感じることに関しては、昔よりも不慣れになってしまったように見えます。マンションやアパートごとに分断された暮らしの果てに辿り着いたのは、家族以外の年長者/年少者に想像力を働かせ難い・世代間のいがみ合いや対立の激しい社会であり、男女の結びつきや子育てが遠のく一方の21世紀です。

ニュータウンの暮らしは、他人や他世代を気に掛ける必要がなく、自分の利益や快楽だけを追求するには最適なので、自分自身に忙しい思春期の人々には都合がいいと思います。しかし、そんな暮らしを何十年も続けていれば、異なる世代に対する想像力が欠落していくのも当然でしょう。

思春期以前の子ども達には、ニュータウンという環境は利便性をもたらしてはくれません。子どもには選択権も判断力も行動力もありませんから、大人の与える環境を否応なく突きつけられます。また、こうした問題に関する専門家と言われる人は、その専門的な学術を修めるためにも、子育て以外のところに大きなリソースをかけ、子育ての手間暇を配偶者や保育者に任せているケースが多いのではないでしょうか。他人の子育てから隔絶されたニュータウンの住人の多くは、世代再生産を自分の問題として認識しにくかろうとも思えるのです。そんななか、他の世代のことを考えられる大人になるのは大変難しいことだと思います。

そして私達の世代に話を絞ると、まず、若者気分をいい加減に卒業し、自分探しや自己充足だけにガツガツするライフスタイルを脱却するのが望ましい、と思います。思春期から壮年期へとギアチェンジしていきませんか、ということです。

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