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2013年4月 2日 (火)

あるIR担当者の雑感(116)~株式市場への畏れ

アベノミクスが喧伝されてアナウンス効果というのでしょうか、昨年の暮れごろから日本の株式市場は活況に方向に転換したようで、日経平均株価は連日値上がりが続き、海外投資家だけでなく、国内の個人投資家も国内株への関心が高まっているということです。先日、ある中小の証券会社の人と話したら、この3ヶ月はとても景気がいいということで忙しいと話していました。

私の勤め先ではどうかというと、市場での出来高は例年よりも増えたような感じはあります。しかし、個人投資家セミナーが盛況とか日経平均が連日更新とか新聞で報道されているような盛況な感じはありません。ただし、何もなければ日経平均は上がらないわけで、そういうところもあるのだろうと思います。何か、冷めているなと言われそうです。私は性格が天邪鬼なのかもしれません。しかし、私の勤め先が徐々にIR活動を進めてきたこの数年間、国内の株式市場として現在に比べればどん底と言っていい時期ですが、この時に私の勤め先のような地味な企業にミーティングをしてくれたような投資家方たちというのは、厳しい状況でも日本の中小型株の地味な会社の話を聞こうというのですから、市場に対して真摯というのか、前向きな姿勢を崩さない(他が控えているこの時期に攻めようというヤマッ気があるのかもしれませんが)人達だと思います。そういう人達とミーティングをして話をしたことは、株式市場が厳しい環境があるということとは別に日本企業に対する厳しい視線でした。それは、国内株市場が厳しい中でも国内企業への投資姿勢を維持して、ハフォーマンスをあげるのは大変なことで、その厳しい戦いを続けながらも日本株に投資を続けるのは期待があるわけで、その期待があるからこその厳しい意見を持っていたと思います。それはまた、彼ら自身もまた、彼らに資金を投資してくる海外の投資家からの日本企業に対する厳しい見方に対して、企業の間に立って板挟みのような状況に立たされていたわけです。そのことは、ミーティングの席で直接的なことを話してくれたファンドマネージャーの人もいらっしゃいました。そういう実態の状況というのは、現在の一見活況を呈している国内株式市場で、大きく変化したのかと問われれば、私には、何も変わっていないと思えるのです。つまり、投資家からの厳しい要求に対して、企業が何も応えていないという状況は何も変わっていない、と。ネガティブといわれればそれまでです。

だって、昨年秋までポロクソだったのが、新年を迎えて瞬間的に一新できたのでしょうか。そんなに一朝にして変われるなら、なぜそれまで変われなかったのでしょうか。ということで、そう簡単に変われるものではないです。では、厳しく企業が求められているものとは、何かと言えば株主を向いた経営、市場へのリスペクトです。シンボリックなことを挙げればROEの数値でしょうか。

また、ある人の話によると、現在の日本株に対して投資をしている海外投資家は以前から継続して投資をしている日本株を良く知っている投資家ではなくて、市場の活況に目をつけた新たな投資家が多いという話です。だから、そういう海外の投資家が日本株、日本企業の実体が変わっていないことに気付いたとき、それに失望した場合には、このような投資家は二度と日本株には戻ってこないのではないかという悲観的な思いを抱いてしまうのです。つまりは、あるムードから日本株に投資をしてみたところが、基本的に日本企業は株主を向いた経営をしていないし、内部留保とか言って現金を溜め込んで、いざという時のためなどといってチャレンジングな経営をしようとしない。こんなベストを尽くさない経営者がのうのうとしているのに、ガバナンスが機能していないため、クビにできない。こんなにエージェンシーコストがかかる投資はごめんだ。といって、投資家に愛想を尽かされてしまう。また、今まで辛抱強く見守ってくれていた投資家たちも、このような状況で反省のポーズをとっていた日本企業が掌を返したように開き直るのを見て、やはり愛想を尽かされてしまう。そんな悲観的なシナリオを誰かから聞かされたような記憶があります。

年度はしめ早々になんかネガティブにことを書き込んでいますが、今、中小型株のIR担当者としては、むしろ、危機感を感じているということです。もしかしたら、杞憂でしかなく、私が個人的に、妄想に捉われているのかもしれません。その方がいいのですが。数日前の日経新聞で、IRが転機にあるというコラムが続きましたが、私個人としては、たしかに転機と思っていますが、それ以上に、厳しく問われるのではないか、と考えています。

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