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2013年5月 4日 (土)

宮川壽夫「配当政策とコーポレート・ガバナンス~株主所有権の限界」(12)

第8章 まとめと今後の展望

筆者は本書で示した内容をもって配当政策やコーポレート・ガバナンスがかくあるべきと主張しているわけではない。配当政策の現実を捉えて従来とは異なる一つの視座を示したに過ぎない。ただし、考えるに企業の行動は一貫した理論に整合的であるべきと思う。そして、その理論整合的な行動は企業個々に存在する。理論とは、個別の現象や事実を科学的に分析して得られた統一的体系的知識である。また、科学的とは、一定の基準を満たした因果関係に着目する態度にある。つまり感覚的・直感的な行動を排し、行動を選択するに至った結論がどのような根拠に基づいているのかを精査することが企業個々に可能であり、求められるはずである。企業の置かれた環境や事業の特性は企業それぞれで異なる。したがって、それぞれで異なる理論整合的な行動を企業自身で真摯に組み立てることが必要になる。その結果、望ましい配当政策やコーポレート・ガバナンスに対する解答が得られるのではないだろうか。以上のような過程において本書の内容が日本企業に新たな選択肢を提供することの一助になるとすれば幸いである。

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