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2013年5月 8日 (水)

あるIR担当者の雑感(114)~IRツールとしての決算短信(7)~事業等のリスク

この項目については、有価証券報告書にも似たような報告事項があり、企業によっては有価証券報告書で報告しているので、そちらを参照するようにと記述を省略しているところもあります。それは、証券取引所が決算短信の書式を、そのようにしていいと定めているからです。ということは、証券取引所ではリスクの説明について、それほど重視していないと考えていいわけです。有価証券報告書の記載事項は内閣府令で詳細に決められているので、これに反するわけにはいきません。決算短信は有価証券報告書に比べれば企業の裁量の範囲を比較的広く認めているので、リスクに関する説明もその範囲のひとつと考えられます。これに対して、企業の側でも、説明を省略するところもあれば、数ページにわたって詳細にリスクを提示する企業もあります。後者の方は至って少数ですが。このような企業は、IRに熱心な企業として色々なところで表彰されたり、模範として例になっている企業がほとんどです。それらの例を見てみると、よくこれだけリスクを列挙していると驚くとともに感服します。

そこで、ないものねだりなのかもしれませんが、もう一歩できないか、と思ってしまうことがあります。それはリスクということに対する根本的な考え方によるものです。それは、リスクとリターンが裏腹の関係にあるということです。ハイリスク・ハイリターン等と言いますが、これは、あることをするのに、うまく行けばリターンが大きいけれど、失敗すれば逆に損失が大きくなるということです。つまり、リターンがあればリスクがついて回るし、逆にリスクを冒すのはそこにリターンの可能性があるからです。企業がリターンを求めるというのは事業上での施策を実行することです。つまり、企業が業績を求めて、何らかの施策を打って出る時に、そこに危険や失敗の可能性が生じる。それがリスクとして認識されるわけです。だから、「事業等のリスク」という項目名は、そのことを指していると思います。つまりは、ここで挙げられているリスクというのは、その企業が何らかの施策を打つことによって生じてくるものといえるわけです。実際の決算短信のリスクの説明のところで、リスクだけを単に列挙しているケースもありますが、先ほど紹介した感嘆させられてしまうようなケースでは、こういうことをしようとしているから生じるリスクだということは、さすがにきちんと説明されていました。そこで、もう一歩として、企業が施策を打つということは将来に向けての成長戦略の一環としてです。これは、短期的なことならば、前々回で検討した「次期の見通し」で説明されていることです。そして、「次期の見通し」この「事業等のリスク」という項目は、同じ「経営成績」という大項目の中に位置づけられています。これは、決算短信の構成の考え方からも、それぞれの項目の性格からも、相互に関連している、あるいはさせるべきと考えていいはずです。つまりは、次期の見通しとして、企業は短期的にこのような戦略をとって、それを実行する。それに応じて、失敗の可能性と危険が生じる、それをリスクとして認識しているのがこうだ、という具合です。だから、これは「次期の戦略」を補完する機能があるといえます。そして、投資判断をするために決算短信を読んで情報を得ようという立場に立って考えとみれば、単独でリスクを取り上げて、それを説明されるよりも、次期に企業はこういう戦略をとろうとしている。この場合、企業はこのようなリスクがあると認識している、と戦略に関連して説明してもらった方が、リアリティを感じやすいし、何よりも戦略の有効性とか妥当性とかリターンを判断しやすくなると思います。

第2の点です。「財務状況に関する分析」のところでも似たようなことを述べましたが、リスクの説明で気になっているのは、多くの企業が“リスクがある”という記述の仕方をしていることです。これは企業のリスクに対する考え方を表わしているとしたら、投資家は消極的と思うのではないかと、思ってしまうのです。誤解が内容に単式に言いますが、リスクというのは存在するのではないはずです。先ほども説明しましたように、リターンを求めて一歩踏み出した時に、失敗の可能性や危険を背負うわけです。それをリスクとして認識するのです。だから、一歩踏み出さなければリスクはないのです。だからリスクを取るという言い方をするでしょう。リスクは予め存在しているのではなく、人為的に発生させているのです。しかし、決算短信のリスクの説明では、そういう説明の仕方はされていません。企業は、敢えてリスクを冒しているわけです。だから、ここでリスクの説明をすることで、敢えてリスクを冒す企業のチャレンジングな姿勢を炙りだすこともできるし、逆にリスクを冒さないのであれば安定した経営ということを強調することもできるはずです。そして、敢えてリスクを冒しているのなら、事前にリスクについて分析が為されているはずです。たとえば、リスクの程度、発生確率、性格、回避可能性などを検討して、その上でリターンし衡量した上で、経営判断をしているはずです。そのことをある程度、ここで説明してもいいのではないか。単にリスクの列挙だけでなく、そういう説明をすることによって、事業戦略や施策の説明を補完し、リアリティをアップさせることになります。そして、企業としてリスクを認識しているならば、当然そのリスクの回避策や防御策を講じているはずです。いわゆるリスクヘッジです。そこまで説明しようとすれば、企業のリスク管理体制や、それを置く組織体制、さらに遡って経営方針や姿勢の説明にまで関連して来ると思います。そこまでくれば、こりリスクのところは、単なるリスクの列挙ということではなくて、企業の将来戦略、あるいは企業の理解のために必要な視点となっているということができます。

私の勤め先では、そうしていくための第一歩として、まずリスクに対する対策の説明を入れていくことから始めようとしています。

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