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2013年7月24日 (水)

あるIR担当者の日記~7月23日(N社の野望?)

「あるIR担当者の雑感」のシリーズ100回以上書き込みしてきましたが、ある程度以上のボリュームで、考えていることをまとめる形となってきたため、書き込みしている本人にとっても少し重くなってきてしまいました。もう少し、気楽に書き込みもしたいと思い、別にシリーズとして、日記のような形ではじめていきたいと思います。なお、「あるIR担当者の雑感」の方も、別に続けていくつもりです。

というわけで、第1回を始めます。

今日は、ある方のご厚意で本日第1四半期の決算発表のあった電子部品メーカーの決算説明会に行ってきました。創業者である名物社長の力強いプレゼンに触れ、勉強させられ、また元気づけられてきました。昨年の第2四半期の際に、世間では震災の復興が云々されている中で、閉塞状況をいち早く察知し、構造改革として事業のポートフォリオを組み直しと大規模な事業再編で効率化を宣言しました。そのため、前期の業績は売上が伸びず、利益率が落ち込みました。それでも、N社長は力強くV字回復を熱く語っていました。それが、この第1四半期で結果がでてきた。四半期売上では最高のものとなり、利益はV字回復し、さらに業績予想の上方修正を決算と同時に発表しました。説明会では、その実績と、今後の展開について、説明と質疑応答が熱く交わされていました。

ここからは、私の勝手な想像です。ここまで、何度か説明会に出席して社長の話を聞いて、こうではないかと考えたことです。もともと、ノートパソコンの冷却ファンで用いる小型モーターを主力製品として事業を成長させてきました。しかし、パソコンというものの成長余力が残り少なくなってきた。そこで、新分野に展開し、自動車のワイパーやパワステ等の様々なモーター、あるいは家電や機械で使われるモーターに進出して、パソコン頼みから、複数の主力事業の並立する事業構成というのが、説明された方針です。しかし、N社はモーターという部品のメーカーからモーターを基幹としたユニットとかシステムとか、あるいはモジュールを提供するメーカーに変わろうとしているのではないか、と強く感じました。その理由として大きく考えられるのは中国などの新興諸国で進んでいる、モジュール化と垂直分裂というビジネスモデルです。例えば、日本のメーカーが電気製品や自動車等の製品を垂直統合といって基幹部品は自社の内部で生産して、他社との差別化をはかります。これに対して、中国の自動車メーカーは最も基幹的で会社の特徴を出せるエンジンを自社生産しないメーカーが数多いのです。内製はコストがかかることと目まぐるしく変化する市場についていくには身軽な方がいいからだと言います。その代り、エンジンはモジュールのように規格化され、複数のメーカーで競争して生産し、自動車メーカーはその競争を利用してコストをかけない仕組みになっています。電化製品でもエアコンでは最も重要なコンプレッサーを購入で済ましてしまうといいます。実際の日本の電機メーカーは中国でエアコンは売れなくても、コンプレッサーは大いに売れているといいます。それが、参入障壁を低くし、起業を促し経済の活性化を促したといえます。そして、N社が進出しようとしているのは、まさにこの部分ではないかと思うのです。実際、このビジネスモデルは中国から中東にも伝播しているとN社長は説明していました。

そして、これらの分野は、たんに軽量で高性能のモーターを動かしていればいいというものではなく、モーターの制御も必要になってくる。そのときに単にモーターを単体として売るのではなくて、モーターの制御も含めたユニットとして売れば付加価値の高いものとなる。それ以上にモジュールとして売ることによって、エアコンのコンプレッサーで日本の電機メーカーが儲けたようなことができます。さらに、自転車の分野でシマノという自転車は作らないのですが、ブレーキや変速機や駆動部が一体となったユニットを生産して自転車の世界を支配しているメーカーがありますが、あるいは、マイクロプロセッサーでインテルがパソコンを支配したように、N社はモーターを基幹としたモジュールで自動車や電化製品の世界を支配できるのではないか、それを狙っているのではないか。

かなり無責任な個人的妄想です。しかし、考え方としてありうると思うのです。N社長の力強い説明を聞いていて、そんな可能性を夢想してしまいました

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