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2013年7月31日 (水)

アンドリュー・S・グローブ「インテル戦略転換」(1)

序章 パラノイアだけが生き残る

「パラノイアだけが生き残る」。これは私のモットーとしてよく取り上げられる言葉だ。事業の成功の陰には、必ず崩壊のタネが存在する。成功すればするほどその事業のうま味を味わおうとする人々が群がり、次々に食い荒らし、そして最後には何も残らない。だからこそ、経営者の最も重要な責務は、常に外部からの攻撃備えることであり、そうした防御の姿勢を自分の部下に繰り返し教え込むことだと思う。私がパラノイアのように神経質になってしまうことは色々ある。

しかし、こうした懸念も、私が戦略的転換点と呼んでいるものに比べれば大したことはない。戦略テク転換点とは、企業の生涯において基礎的要因が変化しつつあるタイミングである。その変化は、企業が新たなレベルへステップアップするチャンスであるかもしれないし、終焉に向けての第一歩ということも多分にありうる。戦略的転換は技術的変化によってもたらされることがあるが、通常の技術革新よりも深刻な事態を招く。また、競合企業によってもたらされる場合もあるが、単なる競争にはとどまらない。戦略転換点は事業のあり方を全面的に変えてしまうので、それまでのように新技術を導入するとか、競合との争いを激化させるといった方策だけでは十分対応できないのだ。変化をもたらす力は音もなく静かに蓄積していくため、何がどう変わったのかは見えにくい。ただ、「何かが変わった」とういうことだけがわかるのである。戦略転換点を見過ごすということは、企業にとっては命取りになるかもしれないのだ。この変化の結果衰退しはじめた、まず、かつての栄光を取り戻すことはできないだろう。しかし、戦略転換点が常に災いをもたらいとは限らない。事業の手法が変化すれば、新しい方法に精通している者にはチャンスが生まれる。新規参入企業であろうと同じことだ。これらの企業にとって戦略転換点は、新たな成長への好機となるかもしれないのである。

今、我々が生きている時代は、技術革新がこれまでにないスピードで進み、すべての産業を揺り動かしている。その変化の速さは、職業を問わずあなたにも影響を与えるだろうし、思いもよらないところから、新しい手法を使った新たな競争をもたらす。では、このような発展は建設的な作用なのか、それとも破壊的な作用なのか、それとも破壊的な作用なのか。わたしにいわせればその両方であり、避けて通ることはできない。テクノロジーの分野では、“可能な”ことはいつの日かかならず“実現”される。われわれはこの変化を食い止めることも出来なければ、そこから逃げ出すこともではない。出来ることは、その変化に万全の構えで備えることなのである。戦略転換点から学べることは、会社経営においても個人のキャリア構築においても同じようにあてはまる。経営者であれば、どんなに詳細な事業計画をもってしても変化を予測することは不可能だと認識しなくてはならない。しかし、たからといって事業計画が必要ないというわけではない。戦略転換点がどういうものなのか、またどう対応すべきなのかを把握しておけば、企業の自己防衛に役立つ。会社が誤った方向に進まないように軌道修正し、新しい秩序の下で繁栄するよう導いていくのは経営者の責務であり、それができるのはあなたをおいてほかにはいない。

企業が新しい状況に対応しようとしているのは、これまでずっとうまく機能してきた経営手法が、もはや過去のものになりつつあるからだ。インテルの経営に長年携わってきて、私自身、戦略転換点から多くのことを学んだ。戦略転換点について考えることが、競争が激化する中でインテルが生き残っていくための援けとなった。私は技術者であり、経営者である。

本書は、ルールの変化がもたらす影響について書かれたものだ。未知の領域で進むべき道を見つけ出す方法についてまとめたものだ。

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