無料ブログはココログ

« あるIR担当者の日記~7月23日(N社の野望?) | トップページ | あるIR担当者の日記~7月24日(アナリストと経営者) »

2013年7月24日 (水)

佐々木俊尚「レイヤー化する世界─テクノロジーとの共犯関係が始まる」(6)

第4章 「民主主義」という栄光

さまざまな権威が消え、「自分たちのよりどころは自分達自身だ」という考えに達したヨーロッパ。これこそが近代の始まりでした。この何もないというところから、一歩一歩自分の足もとを確かめるようにつくられてきたのが民主主義という政治のシステムです。ヨーロッパでは、ブルジョワジーと呼ばれる中流階級が生まれてきます。そしてこのブルジョワジーたちが大きな経済力を持つようになって、それまで政治を独占していた王や貴族に対して「私たちも」政治に参加させろと求めるようになりました。そこから民主主義が始まったのです。

そして19世紀の終わりごろになってくると、ついに労働者階級が政治への参加を強く求めるようになってきます。産業革命が進んできたからです。この産業革命で、人口の移動が起きました。農業から工場へと産業が変化していき、それに伴って、農村に住んでいた人たちが工場のある都市へと移動していきます。人々は空気も水も汚いし狭苦しい場所に住み、劣悪な労働条件の工場で働かされるようになります。これはやがて、大いなる怒りを引き起こします。この労働者の怒りのパワーを、政治に繋げようと考えたのがマルクス主義でした。このころヨーロッパの多くの知識人は、「たぶんブルジョワジー中心の市民社会はもうすぐ終わってもどこの国でもマルクス主義が勝つことになるだろう」と予測していました。ところがそうはなりませんでした。最も大きな理由は、労働者の収入が、豊かになってきたということです。これは19世紀から始まった「第二の産業革命」で、さらに工業化が加速して経済が成長したということが原動力になっていました。皆が中流階級になり、生活が安定すれば、暴力的な革命など誰も望まなくなります。そしてヨーロッパの国々は安定した社会へと進んで行ったのです。都市で増え続けていた労働者の数も落ち着いてきました。生活が安定すると、生まれる子どもの数は減っていきます。働き手を増やして生活苦を乗り越えようとは考えなくなるからです。これによって仕事の奪い合いは少なくなり、ますます生活は安定していきます。そして労働者は社会をひっくり返して革命を起こすことよりも、自分たちが勝ち取ったと富や権利を維持して思考と考えるようになったのです。そして、労働者階級にも選挙権か与えられるようになり、普通選挙が始まりました。これで労働者たちは正式に国民国家のメンバーとなり、ここから「全員が政治に参加する」という民主主義が実質的に始まりました。これが成り立つのは「出来るだけ多くの人が幸福になっていく」というのが可能な社会だからです。そしてヨーロッパでは、この幸福を、産業革命が支えてくれました。

一方、産業革命でヨーロッパの経済が成長してくると、生産のための原材料を調達し、生産されたものを売る先をつくるため、アジアやアフリカ、中東を植民地支配するという「帝国主義」が加速しました。ヨーロッパは中心として豊かさを楽しみ、植民地は周辺として、不平等を押し付けるようになります。つまり帝国主義は、世界全体をヨーロッパとそれ以外に分けたのです。これは国のウチとソトを分ける国民国家の考え方を、ヨーロッパというウチとアジアやアフリカというソトに分けるという考えにまで拡張したものです。

つまりはヨーロッパの民主主義というのは、ソトに不利を押し付けることで成り立ってきたと言わざるを得ないということなのです。ヨーロッパが作った近代の世界システムは、四つの要素から成り立っています。

国民国家であること

国民国家のウチの結束を固め、強い軍隊を持つこと

国民国家のソトを利用し、経済を成長させること

そして国のウチでは、民主主義で皆で国を支えていくこと

これは、ソトがあるからこそ成り立つシステムたったのです。国民国家というシステムは、このソトの発明こそが真髄だったと言えるでしょう。中世の帝国には明確な境界はなく、ソトを持ちませんでした。帝国は無理にウチとソトを分けず、帝国の領土を無限に広げていくという考え方で成り立っていたシステムだったからです。

そしていま、この地球上においてソトは消滅しようとしています。グローバリゼーションが地球を覆い、すべての国のすべての国民を、ウチへと招き入れているからです。

« あるIR担当者の日記~7月23日(N社の野望?) | トップページ | あるIR担当者の日記~7月24日(アナリストと経営者) »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« あるIR担当者の日記~7月23日(N社の野望?) | トップページ | あるIR担当者の日記~7月24日(アナリストと経営者) »