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2013年8月 7日 (水)

アンドリュー・S・グローブ「インテル戦略転換」(7)

第6章 「シグナル」か、「ノイズ」か

どの時点で、ある変化が戦略転換点だとわかるのだろうか。企業経営は、いつも変化にさらされている。小さな変化もあれば、大きな変化もある。一時的な変化もあれば、新しい時代の幕開けである場合もある。企業はどのような変化にも対応していかなければならないが、全部が全部、戦略転換点というわけではない。ある一連の変化が何を意味しているかを知る方法はあるのだろうか。別の言葉で言えば、本当の「シグナル(信号)」とただの「ノイズ(雑音)」をどう見分けるかということである。

自分の周囲で起こっている変化(技術的なものであれ何であれ)を、レーダーに輝く点だと考えてみよう。最初はその輝点が何かわからなくても、レーダーを監視し、その点が近づいてきているのであれば、速度はどれくらいか、どんな形状をしているのかを見極めようとするだろう。たとえその点が自分の周りで停滞しているだけだとしても、進路や速度が変わるかもしれないのだから、目を離すことはできない。ビジネスに「10X」の力をもたらす可能性のある新たな事態には、絶えず注意を払わなければならないのである。

戦略転換点のシグナルがきわめて分かりやい場合もあるが、ほとんどの場合はそれほど明白でない。戦略転換点は、通常、大音響とともに始まることはなく、子猫のように音もなく忍び寄ってくる。後になって当時の出来事を振り返ってみて、漸くはっきりするということも多い。戦略転換点だと気付いたのはいつだったかと後で自問しても、競争力学が変化したことを示す僅かなシグナルが思い浮かぶぐらいだろう。ある変化が戦略転換点を示すものかどうか、見分けるにはどうしたらよいのだろうか。シグナルとノイズを区別するために、次のような問を発してみることだ。

・主要なライバル企業の入れ替わりがありそうか。

・今まで大切な補完企業と見なしていた相手が入れ替わろうとしていないか。

・周囲に「ずれてきた」人はいないか。

組織の中にカサンドラがいれば、戦略転換点を認識するうえで頼もしい存在となってくれる。周知のように、カサンドラはトロイの陥落を予言した女司祭である。彼女のように、迫り来る変化にいち早く気づき、前もって警告を発する人たちがいるのである。こうした人達は、社内のどこにでも存在するが、中間管理職で、販売部門で働く人間であることが多いる彼らは大抵、近づきつつある変化について経営陣よりも多くのことを察知している。彼らは社外で動き回り、現実世界の風を肌で感じているからだ。言い換えれば、彼らの資質は、古い屋の方で実績を上げることを目的に選ばれてきたわけではないのだ。中間管理職は企業の最前線にいるため、本社の比較的安全な場所にいる上級管理職よりも危険に対してずっと敏感だ。悪いニュースは即、彼ら個人に大きく跳ね返ってくる。営業成績が落ち込めばコミッションは減るし、売れない技術はキャリアを台無しにする。だからこそ、彼らは、警告のサインを上級管理職よりもはるかに真剣に受け止めるのだ。こうしたカサンドラたちは、自分から探し出さなくてもよいのだ。あなたが経営者の一人であれば、向こうからやって来るだろう。まるで愛する商品を売り込むかのように、彼らの心配事を熱心に「売り込みに来る」はずだ。その時彼に議論を吹っかけてはいけない。たとえ時間の浪費のように思えても、彼らの話に耳を貸し、情報を得て、なぜそれが彼らにそうした行動をとらせたのかを理解するように最善を尽くすことだ。

 

 

このあと、実践的なハウツーの話題が列記されていきますが、本書の核心部は、インテルがメモリーから撤退してマイクロプロセッサーに転換した事情を説明する第3章から第5章の部分で、その後の章は、その説明で漏れた、気づいたことをアトランダムに追加したものなので、興味のある人は実際の本を手に取って読むことを、お奨めします。このあたり、経営者をしている人が、実際の現場で個々の事象を参考にしていくようなものではないかと思います。経営者以外でも、それぞれの事項は、十分参考になるものはあると思われますので、そは読む人それぞれによって受け取られると思います。

 

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