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2013年8月 4日 (日)

アンドリュー・S・グローブ「インテル戦略転換」(4)

第3章 コンピュータ業界の変貌

競争を引き起こす力が様々に変化する中で、最も対応が難しいケースは、一つの力が突出して強くなり、産業界における事業経営の本質を根本から覆すような場合である。例えば、単純な構成で簡単に手に入るマイクロプロセッサーによってコンピュータが作られるようになり、その結果パソコンが登場した。それによってコストパフォーマンスは、それまでの10倍にアップした。コンピューティングのあり方に起きたこの大革命は、コンピュータ・ビジネスにも重大な影響をもたらすことになった。

従来、コンピュータ産業は縦割りの業界だった。従来のコンピュータメーカーはそれぞれ自社内でチップを製造し、そのチップを搭載したコンピュータを自社で設計し、自社の工場で生産していた。そこにマイクロプロセッサーが登場し、続いてマイクロプロセッサー搭載のパソコン、すなわち「10X」の力が登場したのだ。「10X」の力は技術の進歩によって生じた。それまでは多数のチップで構成されていたものが、ひとつのチップに集約できるようになり、ひとつのマイクロプロセッサーであらゆるパソコンを作ることができるようになったのだ。時間が経つにつれてマイクロプロセッサーは産業構造を変貌させ、新しい横割り型構造を出現させたのである。この新しい構造では、一社ですべてを生産するというような企業は存在しない。

このような変革が進むにつれ、従来の縦割りコンピュータ業界で隆盛を極めていた企業は、次第に生き残りが困難になってきていることに気付いた。しかし一方で、新しい秩序が新規参入企業に飛躍する機会を与えることにもなった。コンピューティングの基盤が変化しただけでなく、競争の基盤も変化した。横割り型構造で競合する企業は、それぞれの領域で最大のシェアを獲得しようと競争するようになった。

産業が転換点にさしかかっているとき、従来の方法を実践してしまうとトラブルに直面することがある。その一方で、戦略転換点が切り開く新天地は、その産業の外に身を置いて来た者にも新規参入のチャンスを与えることがある。その例として、コンパック、デル、そしてソフトメーカーのノベル。この三社は、事実上ゼロからスタートして大企業になった。これらの会社に共通することは、横割り型になった業界で成功するためのルールに直観的に従ったことである。さらに二つの教訓を導く。その一つは、戦略転換点が産業界に吹き荒れているようなとき、従来の構造の中で成功している企業ほど変化に脅かされる度合いが大きく、変化に適応することをためらう度合いも大きくなるということだ。二つ目はどんな業界に参入するにも、確固たる地位を築いている企業の向こうを張って参入する場合は膨大なコストがかかるが業界の構造が崩れると参入コストは明らかに小さくなり、この例のような企業が生まれる可能性がでてくるということだ。

横割り型業界では、大量生産と大量販売が死命を制する。ここには独自のルールがある。横割り型コンピュータ業界の熾烈な競争で優位に立った会社は、業界における暗黙のルールを体現している。そのルールは三つある。第一に、他と比べても大差のないものを無闇に差別化しない、ということだ。顧客に実質的なメリットもないのに、競合企業を出し抜くためだけに改良するのはやめておくことだ。表面的に「よりより良いパソコン」を作りたいという願望に動かされたとしても、それらくことごとく失敗している。パソコンは良さは、互換性と切り離すことはできない。互換性のない「より良いパソコン」は、技術的に矛盾しているのである。次に、技術革新や何やらの根本的な変化が訪れたとき、文字通り扉を叩いて到来するチャンスをしっかり捕まえる、ということだ。最初に行動を起こす企業のみが、競争相手に勝つための時間稼ぎという真のチャンスをつかむことができる。とりわけこのビジネスにおける時間的な優位性は、最も確実なシェアを獲得する道である。逆に言えば、新しい技術の波に逆らおうとする企業は、たとえ努力を尽くしたとしても敗者になるということだ。そして第三に、市場に受け入れられる価格をつけること、販売する量を設定して価格をつけること、である。そして、猛烈に働き、その価格で利益がえれるようにすることだ。こうすれば規模の経済、すなわち巨額の投資が効率性、生産性を生み、その結果、大手供給メーカーになり、巨額の投資を回収できるチャンスが生まれることになる。

 

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