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2013年10月 9日 (水)

田島正樹「スピノザという暗号」(1)

第1章 スピノザの出発

1.歴史的背景

多くの人々が、この哲学者に特別の愛情と尊敬を払ってきた。それもこの場合、けさしてその学説にだけ向けられたものいではなく、むしろ彼を取り巻くいかにも神秘的で静謐な雰囲気とか、数少ないエピソードにもうかがわれるその人柄によるところが大きいだろう。それというのも、彼の著作はたいていとりつくしまもないそっけなさを装い、よほどの覚悟と執念をもって近づく者にとってさえ、ほとんど絶望させるほどの難解さで武装しているために、その学説に魅せられる言いうるほどまでにそのふところにとりいることは、なみたいていのことではないからである。

私見によれば、ライプニッツとスピノザは、一見するところよりずっと大きな共通点があるのだが、ライプニッツのほうがいわば玄人好みの哲学者であることは確かだろう。ライプニッツの学説は、一見したところ荒唐無稽に思われたものが、読めば読むほど深みを帯びてくるといった体のもので、細部に立ち入るにしたがって、ますますわれわれはその鋭さに舌を巻くことになるのである。これに対して、スピノザの難しさは一見したところのさらに先にある。すなわち、一見したところもけっしてやさしくはないが、より大きな困難は、深く立ち入るにつれて見えてくるように思われる「粗雑さ・荒っぽさ」によって、われわれの勇気が挫かれてしまう危険なのである。なまじ哲学的素養のある人ほど、やがて疑惑にとらわれることになる。「果たして本当に偉大な哲学者なのだろうか?」このような疑問が専門家をとらえやすいのは、この哲学者の言葉づかいが伝統的なそれと大きくずれていて、何か恣意的な、アマチュア的手仕事のように感じさせるという点が大きい。

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