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2013年12月12日 (木)

ターナー展(6)

Tunerthree_2Ⅴ.英国における新たな平和│BRITAIN;A NEW PEACE

Ⅵ.色彩と雰囲気をめぐる実験│EXPERIMENTS WITH COLOUR AND MOOD

Ⅶ.ヨーロッパ大陸への旅行│TURNERS EUROPEAN TRAVELS

Ⅷ.ヴェネツィア│VENICE

ナポレオン戦争後のターナーの活動は、独立した画家としてイタリア訪問も行い、その成果も、それなりに発表したという、いわば功成り名を遂げた時期といえるのでしょうか。この時期の後、晩年の作品が制作されるわけですが、イタリア訪問による大作は別にして、この展示では完成し発表された作品の展示は殆どなく、スケッチや習作ばかりで、それはそれなりに参考になるのかもしれませんが、単に好奇心で見に来た私のような人間には、ターナーのことを研究しているわけでもなく、熱狂的なファンでもないので、素通りに近かったというのが正直なところです。研究者にとっては、この時期が晩年の作品に向けての過渡期ということなのか、その手のスケッチが展示の中心だったようです。

「三つの海景」は、とにかく完成した作品と言えそうです。そして、何が描かれているのか分らないようなものになっているので、目立つのでしょうが、タイトルの通りに海岸の波がうちつけてくる様子を三つ並べた、ただし中に上下逆になっているのがあるらしい、というもの。発表を前提にしていたかどうか。

Tunerheidelberg_2ヨーロッパ大陸の旅行の際に描かれた「ハイデルベルク」という作品は、風景画というよりも幻想絵画に見える作品になっています。1.3×2mという大作です。その大きな画面で、これまで見てきたとは違うターナーが迫って来るようでした。今回の一連の展示で、私には馴染みとなったV字型の構図に、焦点となる中央には太陽の黄色い光がぼんやりと描かれ、このように太陽が目立つということは、全体に暗く淀んだような基調になっている。画面全体を見回して、明確な輪郭を持ったものは一つも描かれていない。すべてのものが隣との境界がぼんやりとしてしまって、まるで溶け合ってしまっているような薄ぼんやりして、人物すらも背景のなかに融けてしまっているような、実在感のないものになっています。そこに人間の生気は感じられず、現実の世界というよりは、冥界、死者の世界にいるような、幻想の世界に見えます。画家の大陸旅行を基にして描かれているのでしょうけれど、ハイデルベルクを想起させるような、現実の街の建築や名物は見て取ることができません。多分、イギリスがナポレオン戦争の勝利と経済的な成長によって、富裕なブルジョワが勃興し海外旅行がブームになって、それを対象に海外の風景や名物を紹介するというのが、ターナーのヨーロッパ旅行と作品制作の目的だろうと思います。しかし、この作品は、そのような目的に全く適っていません。これを見て、ハイデルベルクの景色を想像できないし、そもそもハイデルベルクに行きたいと思わせるものではありません。これまで見てきた作品は、たとえ実験的なことを試みているにしても、絵を売るという目的に適う売れ筋を意識しているのが見て取れるものでしたが、この作品は、そういうものが見えてこないものになっています。未完成の作品なのかと思いましたが、中央下に人々の集団がゾンビの行列みたいに並んでいるのをどうやって完成させるのか、を考えると、これはこれで、これ以上仕上げるのは無理なのかもしれません。この作品は、V字型の構図がしっかりしているので、風景画の体裁を一応とっていますが、それが崩れてしまえば、シャガールの幻想的な作品やカンディンスキーの初期のコンポジションに至る前の抽象的な志向を強めたころの作品に似たテイストを感じさせるものでした。今回展示されていたターナーの作品の中で異彩を放つもので、とくに印象に残った作品でした。Kmmurnauwithachurch1910


 

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