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2014年2月 8日 (土)

生誕140年記念下村観山展(5)~第4章 再興日本美術院

Kanzanhousi 岡倉天心が亡くなって、横山大観らと日本美術院を再興させて、その後の下村の作品ですが、枯淡というような解説がなされているようです。しかし、私には、下村の作品は描き込んでいくところに大きな特徴があるので、老境に入り、作品を描き込む気力に衰えが生じ、それが作品に反映してきた、というのが私の正直な感想です。この時期の作品の中には、熟練した技巧の冴えが見られるものもあれば、衰えを隠すことのできないものあって、玉石混交になっている、と私は思います。

Kanzanfox_2 「白狐」という作品です。前回に見た「木の間の秋」や「小倉山」に通じる大作です。木の葉や草の精緻な描写には変わりありません。しかし、この「白狐」では、先行のふたつの作品に比べて、色彩が淡く、見た目の変化に乏しいものになっています。晩秋から初冬にかけての、紅葉も終わり、雪化粧には未だ早いという、ちょうど草木が装うすべが何もない時期を取り上げているということなのでしょうけれど、したがって、色が制限されるところを逆手にとって、その限られた色のグラデーションで微妙な変化に富んだ画面を作っています。しかも、中心となる狐が白狐で、いうなれば色のない存在であるわけです。この作品では、草木を「木の間の秋」での稠密で妖しい世界を、強調した色彩ではなく、色彩のグラデーションを用いて描き込み、中心の白狐を白い空白のように画面に存在させています。そうすることで、淡い色彩ではありますが、稠密な草木と白狐を対照的に描くことで、草木の妖しさが際立ち、それに対して、白い狐が清澄なものとして見えてくる効果を上げていると思います。また、屏風左側の大きく空間をとってススキをまばらに描いていてると、右側の草木と白い狐を対照的に描いているので、重層的な対照関係で、さらに狐がシンボリックに屹立する感じになっています。

Kanzankaede 大作ではありませんが、「楓」という作品にも、下村の淡い色彩のグラデーション効果の良く出ている作品ではないかと思います。下村の草木の描写は細部を描き込むという特徴は、あまり全体を様式化しすぎてしまうと、細部のパターン化が進み省略されてしまうことになります。そこで、細部を過剰に細かく描きこめばバランスを欠いてしまいます。そのためもあるのでしょう。かといってあまり写実的に描写を追及すると日本画の枠に納まりきらず、他のものの描写とのバランスを失ってしまいます。そのため、下村の草木の描写はパターン化と写実との間で独特の緊張関係をもっていたと思います。それが、下村の特徴でもあったと思います。しかし、この時期にはいると、その微妙なバランスが崩れてくるように、私には見えました。細部が浮いてしまって効果を上げていないのです。それが「弱法師」(一番上の作品)という作品です。評価の高い作品のようですが、私には描かれている個々のパーツがバラバラで、散漫に感じられました。

Kanzanmona また、ひとつの話題ということで「魚籃観音」という作品。中央の観音の顔はレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」なのでしょうけれど、言ってみれば悪趣味で賛否両論あったとのことです。それは別に措いて、私には描き込みが足りないほうが、寂しくみえます。アイディアがあっても、それをまとめ上げる力が出なくなっているのを、この作品はあからさまに示していると思います。前にも西洋絵画の模写を見ましたが、あのくらいの力が入っていれば、作品として、それなりに見ることのできるものになっていたと思います。

それだけに、下村という画家の作風は、日本人の好む枯淡という風情とは相いれない、何か過剰というべきものが支えていたように思います。出来上がった作品は、すっきりしていますが、その根底は西洋絵画にも負けないほどの脂ぎった描くことへの欲望のようなものを感じます。それは、それほど多くはありませんが、近代以降の日本の画家のなかでは、異彩を放っていると、私は思います。

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