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2014年2月 3日 (月)

ジャズを聴く(3)~ハンク・モブレー「ソウル・ステーション」

今日は、テナー・サックスのハンク・モブレーを聴きます。まずは、モブレーのプレイについて

 

イギリス人批評家の“テナー・サックスのミドル級チャンピオン”という彼を評した言葉がひとり歩きして、「B級」と評されることもあるらしい。“ミドル級”という形容は、スタン・ゲッツほど軽くはなく、ソニー・ロリンズほど重くない、ということを言いたかったらしい。つまりは中庸の魅力という意味合い。ただし、この中庸ということは、裏返して言えば突出した特徴というのがなくて、言葉で形容しようとすると否定的な言辞を並べてしまいがちなのだ。ハードにドライブするソニー・ロリンズとか、機関銃のように間髪入れずブローしまくるジョニー・グリフィンとか、唸るようなスピード感溢れるジョン・コルトレーンとか、咽び泣くような哀感漂うスタン・ゲッツとか、そういう聴く者を一瞬のうちに引き付けてしまう特徴を持っていない、地味にさえ聞こえてしまうところに、実はモブレーのプレイは特徴がある。一聴でそれと分かるというのではなく、何度も繰り返し聴いて、耳が慣れてくると味わいが深まってくるというタイプと言ってよいのではないか。

モブレーが活躍し始めた当時のテナー・サックスはデクスター・ゴードンやソニー・スティットのようにパーカーの語法をいかにテナーに置き換えるかということが依然として行われていて、ロリンズのように一頭地抜きん出たパフォーマーは殆どいなかったと言える。モブレーは自分なりのオリジナリティーで勝負し、テナーならでは良さを生かした太くまろやかなトーンと流れるようなメロディ・ラインを追求していた。モブレーのソロはコードを基盤にしたメロディの歌い切りを心がけているように聴き取ることができ、オリジナル曲を聴いてもテーマを延々と続く4ビートに乗り、ひたすらメロディックにラインを組むことにポイントを置いているようだ。そこで、たとえテンポが速くなって、鋭いリズムでもゆとりを感じさせるようにメロディを吹いている。しかも、テナー・サックスの特性を生かした太くてまろやかな音色が、他のプレイヤーにはない寛いだ心地よさを生み出す。

そこで感じられるのは、控え目で繊細な味わいだ。決して、派手に万人受けするわけではないか、ファンとなったものだけが自分たちだけのモブレーを共有できるといったようなインティメートな空間をつくることができる。

 

 

そして、「ソウル・ステーション」です。 

 

Jazmobley_soul Remember

This I Dig Of You

Dig Dis

Split Feelin's

Soul Station

If I Should Lose You

 

 

Art Blakey(ds)

Hank Mobley(ts)

Paul Chambers(b)

Wynton Kelly(p)

1960年3月26日録音

 

ハンク・モブレーがリーダーとなったワン・ホーンの録音、ピアノのウィントン・ケリーの跳ねるようなピアノをバックにモブレーの分かりやすい、よく歌うフレーズが映えるアルバム。最初と最後にスタンダード・ナンバーを置き、間にモブレーのオリジナル曲を配している。

最初の「Remember」では、冒頭からモブレーが親しみやすいシンプルなメロディを吹く。このバックのウィントン・ケリーの軽快なピアノが歯切れよく、アート・ブレイキーらのリズム・セクションも煽ることなく控え目で、リラックスした中で、しっかりとミディアム・テンポのリズムの枠をつくった中で、モブレーが即興の歌を軽やかに歌う。彼の即興はテーマを分解するというよりは、テーマを変奏して、そこからフレーズが派生してくるような印象だ。もとのテーマよりもアドリブのフレーズの方が、よりメロディアスで歌っている。ソニー・ロリンズの『Saxophone Colossus』の最初の曲「St. Thomas」でテナーが提示するテーマに感じが似ているテーマなので、聴き比べていただけると、モブレーの音の軽さがロリンズと比べてよく分ると思う。その後の、ロリンズの急速な展開と比べると、モブレーの展開はモタモタした感じがするかもしれないが、それこそが、ここでのモブレーの魅力となっている。次の「This I Dig Of You」の冒頭でピアノとベースが掛け合うようにリズムが上昇していくような上に乗るようにモブレーのサックスが入ってくるのがとても印象的。その後すぐにピアノの軽快なソロが推進力ある乗りを生み出して(こういうのをスウィンギーというのか)、そこでリズミカルでメロディアスなモブレーのソロが入る。彼の軽い感じの音が、ダンサブルな乗り(ビ・バップのアドリブではダンサブルになることはあまりない)で、思わず身体を動かしたくなるような楽しさがある。この後の曲は、ミディアム・テンポで、軽快な乗りでメロディが歌うモブレーのソロをフィーチャーしたナンバーが続く。このように書くと単調にみえるかもしれないが(人によっては変化が乏しいと感じかもしれない)、モブレーの語り口が聴く者を飽きさせない。むしろ、その乏しい変化(大袈裟にブローもない替わりに、深刻ぶったマイナー調の沈むようなバラードもない)と口当たりの柔らかさが、聴く者に安心感とリラックスした感じをあたえ、何度も繰り返して聴く、あるいは、そこに音楽が流れているという雰囲気、深刻に音楽に向き合うと言うよりは、リラックスして音の場にいるという聴き方を許すようなところがある。

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