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2014年4月29日 (火)

ラファエル前派展 英国ヴィクトリア絵画の夢(4)~1.歴史 History(アーサー・ヒューズ)

Preraffahu1 アーサー・ヒューズの「四月の恋」と言う作品です。展示室に入って最初に飾られていた作品で、正面に主催者あいさつが大きく掲げられていた横面に、この小さな作品が置かれていたので、目立たず、通り越す人が結構いたようです。何と言っても先には、人気のある「オフィーリア」に人だかりしているのが目に入っているのですから。とはいえ、この作品にとっては、静かにひっそりとした佇まいで、心底この作品に惹きつけられる少数の人々に見守られるのが、相応しいのかもしれません。

アーサー・ヒューズと言う画家は、初めて聞く名前ですし、それほど日本で有名な画家出来ないと思います。正確に言うとラファエル前派兄弟団に参加したわけではなので、ラファエル前派と言えないということです。1850年ころにラファエル前派の機関誌を熱心に購読し、ラファエル前派の画家たちとも交流があったといいます。ジョン・エヴァレット・ミレイが恋人たちを描いた初期の作品などに影響を受け、この「四月の恋」などもそうで、自然の細密な描写によく表われていますが、自然の逞しさが感じられるミレイに比べて、自然に対する人間若さや恋の儚さを感じさせるところに特徴があるということで、画家としては、アカデミーに出展するも認められず、挿絵画家として活躍したということです。

この「四月の恋」という作品は、アルフレッド・テニスンの「粉屋の娘」という詩をもとに描かれたようです。

愛すれば心は軋み苛立ち痛むもの

愛に漠とした後悔はつきものか

目は無為の涙に濡れながら

無為の習いによってのみわたしたちは結ばれる

愛とはいったい何でしょう、いずれ忘れてしまうものなのに

ああ、いいえ、いいえ

この詩のこまごまとして部分を描写する代わりに、ヒルガオの繁る庭のあずまやで口論する若い恋人を描いていると言います。しかし、描かれている中心は女性で、男性は女性の右手に影が見える程度です。何よりも、女性のドレスの青と木の葉のグリーンの息を呑むほどの鮮やかさが印象的です。全体に影の部分おおい仄暗い画面の中で、青と緑が鮮やかに輝くと、なんとなくひんやりとした密やかで繊細な印象が強くなります。全体に青みがかった色調のなかで女性の腕と顔の肌色が透き通るようです。女性の顔の表情は細かく描き込まれておらず、観る者の想像に任せるということなのでしょうが、全体の色調と俯きかげんポーズから、物憂げというのか、哀しみを湛えているように見えます。そこをはっきりと描いていないことによって、具体的な感情としてよりも雰囲気として恋の苦しさとか儚さ、それによる哀しさが漂ってくる効果を上げているように見えます。不健康とまでは行かないけれど、繊細さを突き詰めて行けるところまで行ったという感じがします。

Preraffahu2 同じ作者の「ロムニーを退けるオーロラ・リー」は「四月の恋」よりも、もっと小さな作品。青と緑の色彩が画面全体を覆い尽くす、その色調のよって幻想的な風景を作り出しています。エリザベス・バレット・ブラウニングの「オーロラ・リー」という詩に題材をとっているということです。画面中央のオーロラ・リーという女性が自身の詩集を携え、ロムニーからの求婚を拒むシーンを描いているといいます。「四月の恋」に比べて、人間の存在感はより希薄になっていて、例えば左側の男性と、彼の手前の白百合を比べてみれば、どちらに存在感があるがは一目瞭然です。二人の人物は地に足がついていないように見えて、画面の中で浮遊しているかのようです。中央の女性も人間と言うよりは妖精のような実体としての存在感があまり感じられず、顔の表情にも生気があまり感じられません。こんなことを書くと不健康で死んだ絵のように受けられるかもしれませんが、これに対して自然描写は細かくて、生命感が感じられるものとなっていて、これに対して、人間を見る目が無常観のような人の儚さに目が行くような視点で描かれているように見えます。その場合、人間の存在の現実性が薄くなって、幻想の風味が反比例するように前面に出てくる。それが、ヒューズの作品の特徴ではないか、と思います。それをヒューズ独特の青と緑の鮮やかな色調が効果的に盛り立てている。それゆえでしょうか、ここで描かれている女性は、ギュスターブ・モローやベルギー幻想派のクノップフの描く幻想的な女性を想わせるところがあると思います。

アーサー・ヒューズは沢山の挿絵を描いたといいますが、ラファエル前派の周辺の画家として、今回、初めて見た画家です。今回の展示で出会うことができたというのは、大きな収穫であったと思います。

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