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2014年5月 1日 (木)

ラファエル前派展 英国ヴィクトリア絵画の夢(6)~3.風景 Landscape

Preraffacolins ラファエル前派の画家たちは独立した風景画をそれ程には制作していないと思います。あったとしても、スケッチとか習作とか、そういうものではないでしょうか。展示作品も、それほど多くありませんでした。しかし、自然の描き方には特徴があったと言います。批評家ラスキンの著述にも触発され、画家たちは緻密な観察とモチーフとの息の長い関わり合いを通じて、自然界を油彩で描く独自の斬新で正確な手法を確立した。ラファエル前派の自然の見方はほぼ例外なくパノラマ的な景観を避け、近くと遠くを一つにまとめ、すべての要素を等しく正確に描出する。1839年に写真が静止画として完成の域に達しても、画家たちはなお風景を顕微鏡で覗いたように精緻に描こうとする意欲は失わず、かえってさらに細やかな描写を求める傾向に拍車がかかる。これは、例えば、ミレイの「両親の家のキリスト」における窓の向こうの風景や「マリアナ」における窓に映る風景などに当てはまると思います。とにかく、眼の前に映るものを片端からできる限り克明に描いてしまおうというものだと思います。そのときに、風景を空間がひろがるとか奥行が延びるとか、そういうパースペクティブで捉えることをしなかったゆえに風景そのものを単独で取り出して描いて提示するということが、あまりなかったのではないかと思います。空間としてとらえるということには、そこに見る人の尺度が加わり、風景を構成するものに軽重の評価をして描かれた画面はその価値判断によって構成されることが、かれらの考え方にはそぐわなかったということが言えると思います。しかし、目に映るものをすべて描くといっても、目を向けるという制限が自ずとあるので、どうしても風景を限定して切り取ったようなものとならざるを得ません。人間の視野は限られています。だから、それを忠実に描こうとしたら画面と言う制約もあるのですから、言ってみれば箱庭のようなものにならざるを得ません。

チャールズ・オールストン・コリンズの「5月、リージェンツ・パークにて」という作品です。画面に空間を構成させるというのではなくて、風景を切り取って、その切り取ったものを忠実に描いたと思われる作品です。しかし、ある視点で風景を切り取って来るというところに、選択が働くわけで、その切り取り方について、画家に認識があったのか分かりません。しかし、その結果として出来上がったものは、まるで建設現場の建物の完成予想図のような、整理されたものになっています。人気のない公園は、短く刈り込まれた芝生をベースに、花壇、園路、道路、垣根、池が水平の列になって並んでいるのに対して、人物、柵の杭、木の幹の黒い垂直線とで図形のような秩序を形づくっています。それは、たしかに見方によっては、ルネサンス初期以前の遠近法が大きく導入される前の、神の秩序というような現実の空間とは違った平面的に整理整頓して事物を並べたような画面に通じるところがあります。ここにあるのは、現実の風景を描写するということをタテマエとして、手法として掲げながら、その現実とは何かというと、その現実を見る目にフィルターをかけていることに気づいていないか、そのことを見ようとしていない、ということです。ミレイやロセッティといったラファエル前派の有名な画家たちは風景だけを描いた作品というのは、ほとんどなく、人物を思い思いの設定で描いているため、いくらでも好きな衣装を着せたり、背景を意図的に設定したりということができました。しかし、このような風景画では、風景自体を人物のようにいじることはできないため、ラファエル前派の矛盾とまではいかないまでも、どこかチグハグしているところが綻びとして表われているのではないか、そういう作品として、この作品を見ることができると思います。

それはまた、ラファエル前派の作品を購入してくれる主なターゲットである、産業革命や海洋進出で勃興してきた新興のブルジョワジーにとっては、写実的な技法で描かれているので、何が描かれているのかを特別な教養がなくても理解できる分かり易いもので、描かれているものが、秩序正しい、いうなれば品行方正、お上品っぽいもので、しかも熟練度が高い、いかにも高品質というのが識別できるというものであれば、高い評価を獲得できるものであったと思います。

 

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