ウォーレン・バフェットの「株主への手紙」2013(10)
私の二つの投資と株式投資にはひとつの大きな違いがあります。私が未だに農場やニューヨーク不動産についての引用を参照していないのに対して、株式投資は毎分皆さんの持ち株についての評価が提供され続けています。
株式の投資家が持ち株について幅広く変動している評価を知っていることは利点であるべきで、一部の投資家にとっては、実際そうなのです。結局、私の資産の隣の農場を持つむら気な人が、毎日のように私に向かって私の農場を買う、あるいは彼の農場を私に売る価格を大声でいうとしたら、そして、彼の精神状態のように短期間で価格が幅広く変化するとしたら、私は彼の不規則な振る舞いから、どのようにすれば利益を得ることができるのでしょうか。彼の毎日叫ぶのが途方もなく低い価格で、かつ私が余分な現金を持っているのであれば、私は彼の農場を買うでしょう。彼が叫んだ価格が不合理なほど高ければ、私は彼に農場を売るか、今のまま耕作を続けるでしょう。
しかしながら、株式の保有者はしばしば気まぐれを起こし、仲間の不合理な振る舞いは、同じように不合理を起こさせる。市場、経済、金利、株式の価格変動その他に関するおしゃべりがあまりに多いので、一部の投資家は専門家の話を聞くことが重要であると思っているようですが、彼らのコメントに従って行動することを重要に思っているのは、さらによくないことです。
農場やアパートを所有している際に、何十年も静かに座っていることができるような人は、株価の変動にさらされたり、「そこに座っていないで、行動を起こせ」という暗黙のメッセージを加えた解説者に追随する時に、頻繁に熱狂に捉われることになります。このような投資家にとって、ありうべき無条件の利益が悪態に変わってしまうのです。
「フラッシュ・クラッシュ」という株価の瞬間的な急落やいくつかのその他の極端な市場の価格変動は、気まぐれでお喋りな隣人が私の農場の投資に傷つけるほどには、投資家に損害を与えることはできません。たしかに、価格が価値とかけ離れて転落している時、投資家が利用できる手持ちの現金を持っているならば、転落している市場は本当の投資家には役立つものとなるのです。投資する際に、皆さんは恐れを友とし、高揚を敵とすべきです。
2008年後半に起こった異常な金融恐慌の間、たとえ厳しい不況がこれから起ころうとしていたとしても、私は農場やニューヨークの不動産を売ることを、決して考えませんでした。そして、もし私が長期的な見通しの手堅いビジネスを100%所有していたならば、それを放棄することを考えること自体が愚かなことです。それでは、なぜ、私は素晴らしいビジネスへの小さな参加である私の株式を売ってしまったのでしょうか。真実、かれら誰もが人を失望させる人だったとしても、グループとしてはうまくいくことは確かでした。アメリカの存在する驚くほど生産的な資産や人間の無制限な独創性を大地が呑み込んでしまうなどと本当に考えている人はいるでしょうか。
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チャーリーも私も株を買う時には、ビジネスの一部として考えて、我々の分析は会社全体を買収する際に行う場合の分析に極めて近いことをします。我々は、最初に5年かそれ以上の期間にわたる利益の幅を賢明に評価できるかどうかを判断しなくてはなりません。もし、その答えがイエスであるならば、もし我々の評価する最低限度に近い手ごろな価格で売られるならば、我々はそのビジネス、あるいは株を買うでしょう。しかしながら、もし、我々が将来の利益を見積もる能力を欠いているならば、通常はどちらかでしょうが、我々は他の株を見積もる方に移ります。この54年間、我々は一緒に働きました。マクロや政治的環境、他の人々の見通しのために我々が魅力的な購入を思いとどまったことはありませんでした。実際、我々が決定をする際には、これらの事柄を考慮することはありませんでした。
しかしながら、我々が「自分の土俵」の境界線を認識し、その内側に留まることは不可欠です。それでも、我々はビジネスでも株でも買い付けて失敗することがあります。しかしそうなったとしても、長い上昇相場に誘われて、予想される価格変動を先取りしたい気持ちで購入するときに起こる大失敗ではないと思います。
もちろん、ほとんどの投資家は、人生において景気見通しについての勉強を最優先事項とはしていません。賢明であれば、彼らは、特定の企業について将来の収益力を予想するのに十分な知識がないと結論するでしょう。
このようなノンプロの投資家にとって良い知らせがあります。典型的な投資家は、このような技術を必要としません。全体として、アメリカのビジネスは時とともに良くなっていますし、それがしばらく続くでしょう。(突発的な事態があるかもしれませんが)20世紀にダウジョーンズ工業株インデックスは66から11,497まで進み、配当金も増加しました。21世紀には、さらに相当な増加を目撃することができるでしょう。ノンプロの投資家のゴールは勝者を選ぶと言うものではありません。投資家もその助言者もそうすることはできないでしょう。しかし、むしろ、全体として事業の分野をクロスさせた所有をすることが間違いなく上手くやることになるのです。低コストのスタンダード・アンド・プアーズ500インデックス・ファンドはこのゴールを達成できるでしょう。
それは、ノンプロが投資すべき「何か」です。「何時」もまた重要です。大きな危険は、臆病か初心者の投資家が極端に活気のある時に市場に参加してその後市場が減退して評価損を出してしまうことです。(故バートン・ビッグスの次のような観察を思い出してください「強気の市場はセックスのようなものだ。終わる直前に最高に感じる」)このような時期を誤ってしまったこと投資家に対する特効薬は長い期間にわたって株式を持ち続け、悪いニュースがあって株価が高値から落ちても売らないことです。このようなルールに従って、多角化してコストを最小限に維持している「無知な」投資家が確実に満足する結果を得ることができるのです。本当に、自分の欠点について現実的である洗練されていない投資家は、ひとつの弱点すら認識できていない知識豊富なプロの投資家よりも長期的な成果を得ることができるでしょう。
もし「投資家」が互いに農地を熱狂的に売り買いしていれば、そこからの収穫の産出量も価格も増えないでしょう。そのような振る舞いから得られる唯一の結果は、農場の所有者がアドバイスを求めたり地所を変えたりするコストがかさんだことにより、全体的な収入の減少が起こることです。
それでも、個人や機関は、助言を与えたり取引をすることで利益を得る人々から、絶えず活発であるように迫られています。その結果として生じる摩擦の経費が膨大なものとなって、総計として投資家にとっても利益が上がらないことになります。それで、お喋りには耳を貸さず、経費を最小限に抑えて、農場を持つのと同じように株に投資するのです。
私のお金は、私が次に述べるとおりであると付け加えます。私がここで助言することは、私の遺書に書かれている特定の指示と基本的に同じです。ひとつの遺贈は、現金は私の妻の利益のために受託者に届けられると定められています。(私のバークシャーのすべての持ち株は私の財産が閉鎖されてから10年にわたり特定の慈善団体に分配されてしまうので、現金は個人としての遺贈に使います。)受託者に対する私のアドバイスは単純なものではあり得ませんでした。現金の10%を短期国債に、90%を低コスト・スタンダード・アンド・プアーズ500インデックス・ファンド(私はヴァンガードのものを推奨しました)に入れるというものです。この方針による信託の長期の結果は、大部分の投資家によって達成されるものよりも良いものになると信じています。年金基金、機関投資家あるいは個人にせよ、そういう投資家たちは、雇っているマネージャーに高いコストがかかるからです。
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