ウォーレン・バフェットの「株主への手紙」2013(9)
投資についてのいくつかの考え
「投資はビジネスライクに行う時には知性が必要になる。」ベンジャミン・グレアム
私は、投資について知っていることの非常に多くをベン・グレアムに負っているので、彼の引用からこの議論を始めるのは相応しいことです。ベンについては後で詳しく説明しますが、先に普通株について説明します。しかし、最初にかなり以前に行った2件の非株式投資のことをお話しします。どちらも金額において私の資産を書き換えることはありませんでしたが、有益だったと思います。
私の話はネブラスカから始まります。1973年から1981年までの間、中西部では農産物価格が暴騰しました。これは、急激なインフレが起こり小規模な地方銀行の融資方針がそれを加速化させたことによって起こりました。それからバブルがはじけ50%以上の価格下落をもたらし農民と貸し手を打ちのめしました。アイオワ州とネブラスカ州の銀行は、このバブルの余波で最近の大不況の5倍の損害を受けました。
1986年に私はFDICから、オマハの北方500マイルのところに、400エーカーの農場を購入しました。それは28万ドルでしたが、数年前に破綻した銀行が農場に融資した金額よりかなり少なかったのでした。私は、農場を経営することについては、何も知りませんでした。しかし、私には農作業が好きな息子がいました。私は彼から、農場は何ブッシェルくらいのコーンや大豆を生産できるか、そして営業経費はどのくらいかかるのかの両方を教わりました。これらの予想をもとに、私はこの農場の標準的なリターンを10%で計算しました。私は、また、時がたつにつれて生産性が上がり、同じように作物価格が上昇するだろうと予想しました。しかし、その二つとも外れました。
私は投資が下降するのではなく、本質的に潜在的に上昇するということは普通ではない知識や知恵ではないと思います。もちろん、時には、人々を失望させる不景気や価格の暴落もということもあります。しかし、それだけでしょうか。逆に、普通でないほどいい年もあります。そして、私は資産を売らなければならないように追い詰められているわけではありません。28年後の現在、農場は私が購入した時に比べて3倍の利益を出し、5倍の価値になりました。私は未だ農場について何も知らなくて、最近農場に2回目の訪問をしました。
1993年に私は一つの小さな投資をしました。私が以前CEOを務めていたソロモン・ブラザースのビルのオーナーであるラリー・シルヴァースタインは、私に整理信託公社が販売していたニューヨーク市立大学に隣接した小売物件の話をしてきました。この物件を含む商業不動産でバブルが再びはじけました。そして整理信託公社は楽観的な融資手続きにより愚行を煽って経営破たんした金融機関の資産を処分するためにつくられました。
ここでも、分析は単純でした。農場の場合と同じように、資産からのテコ入れされていない直接利回りは約10%でした。しかし、整理信託公社によって資産は管理されておらず、いくつかの空き店舗が賃貸にまわされれば収入は増加します。さらに重要なことは、このプロジェクト用地の約20%を占有するテナントは、他のテナントが1フィートにつき平均70ドルなのに対して5ドルしか使用料を払っていませんでした。この9年間の割安の賃貸借契約の満期が収益の大きな増加要因となることは明らかでした。ニューヨーク市立大学に移転の予定はなく、場所も最高でした。
私は、その区画を購入したグループにラリーと友人のフレッド・ローズとともに加わりました。フレッドは、家族とともに、資産を自ら管理する経験豊かで優秀な不動産投資家でした。そして、彼らは管理を始めました。古い賃貸借契約が満期になったとき、収入は3倍になりました。毎年の分配は我々の独自の株式投資の35%を上回ります。その上、我々の独自の住宅ローンは1996年と1999年に財政を立て直し、我々が投資したものの150%を上回る何回化の特別の分配がありました。私は、いまだ、それらの資産の現物を見ていません。
農場とニューヨーク市立大学近くの不動産からの収入は、今後の十年で、さらに増加するでしょう。増収は劇的ではありませんが、この二つの投資は、私の老後のための、そしてその後の私の子孫のための強固で満足できる保有資産になるでしょう。
私は投資の一定の基本を説明するために、これらの物語をしました。
・ みなさんは、満足な投資リターンを得るために、専門家である必要はありません。しかし、そうでないならば、皆さんは限界を知り、合理的でうまくいく道筋を辿らなくてはなりません。物事を単純化し、ブレないことです。手っ取り早い利益を約束された時は、素早く「ノー」と言いましょう。
・ 皆さんは、資産の将来性に焦点を絞って考えましょう。もし、皆さんが資産の将来の収益の概算に満足できないならば、時には、そのことを忘れて進みましょう。誰にも、投資のすべての可能性を評価することはできません。
・ 皆さんが購入について考えたときに将来の価格変更に注目すれば、推測をしなければならなくなるでしょう。そのことに関して、不適当なことはありません。しかしながら、私は、その推測がうまくいかないということを知悉しています。そして、私は、そのような推測により継続的な成功ができると主張する人々に対しては懐疑的です。コイン・トスの最初の一回で半分が勝ちます。彼が、そのゲームをずっと続けるとしたら、その勝者のもうけを誰も予想することは出来ないでしょう。そして、ある資産が最近値上がりしたという事実は、その資産を購入する理由にはなることはありません。
・ 私は二つの小さな投資では、その資産が生み出すものだけを考えて、毎日の評価の変動にたいしては気にしませんでした。ゲームは、目がスコアボードにくぎ付けになったりせずに、競技フィールドに集中するプレイヤーが制するのです。皆さんは、土曜と日曜は株価を見ることなく過ごせるでしょう。それができるなら、平日でも、そうできるように試してみてはいかがでしょうか。
・ マクロの意見を形成したり、または、他人のマクロ市場の予測を聞くなどということは時間の浪費です。本当に、重要な事実の皆さんのビジョンを邪魔することになるので危険でもあります。(私はマーケットがこれからどうするかについてテレビ解説者がもっともらしく語るのを聞くとき、ミッキー・マントルという有名な野球選手の容赦ないコメントを思い出します。「あなたは、放送ブースに入るまで、このゲームがとれほど単純かということが分っていない。」)
・ 私の二つの購入品は1986年と1993年のものです。経済、金利、または株式市場が、この次の年である1987年と1994年にどうなるかということは、そのような投資をする時に、私にとっては重要なことではありませんでした。私はその時に報道の見出しや専門家がどのようなことを言っていたかを思い出すことはできません。お喋りの内容がとうであれ、コーンはネブラスカで育つし、ニューヨーク市立大学に学生は集まるのです。
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