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2014年9月15日 (月)

ジャズを聴く(15)~デクスター・ゴードン「アワ・マン・イン・パリ」

OUR MAN IN PARIS        1963年5月23日録音

Jazdex_pariScrapple From The Apple

Willow Weep For Me

Broadway

Stairway To The Stars

A Night In Tunisia

 

Dexter Gordon (ts)

Bud Powell (p)

Pierre Michelot (b)

Kenny Clark (ds)

 

ゴードンのファンにはお叱りを受けると思うが、彼の魅力は時代錯誤がうまく嵌ったというタイミングとブランドによるものだろうと思う。それが、もっともうまく現われたのが、このアルバムであると思う。ハード・バップに陰りが現われた1960年代前半のヨーロッパの地で、バド・パウエルを迎えての録音というストーリーは何がしかの期待や憶測が尾鰭のついた話を生み、伝説などという形容をする者があらわれる。(このアルバムの録音の経緯などの話はライナーノーツをはじめとして至る所で語られているので、ここではかないけれど)そこで演奏されているのは、紛れもないバップでバド・パウエルもがんばっているともなれば、演奏は実際以上にストーリーが味付けされ、それがさらに膨らんでいく。

ただし、これはゴードンが自覚的に自己演出してやったとか、そういうことではなく、結果として、ゴードンの録音を愛でる人々が、それらを聴くことで作っていった付加価値が膨らんだ結果であるともう。たぶん、ゴードンその人は、そういうこと自体を面白がるような性格の人だったのではないだろうか。(でなければ、映画に出て、パド・パウエルを彷彿とされる人物を演じたりはしないだろう)

で、私は、そういうゴードンに対して、だからといって批判がましいことをいうつもりは全くない。そういう付加価値を含めて、このアルバムを聴くのが楽しいからだ。実際のところ、当時のような環境で不安定な精神状態にいたはずのバド・パウエルをその気にさせて、これほどのプレイをさせるというのは、それだけでゴードンの実力と柔軟性、そして性格をものがたっている。

例えば、1曲目の「Scrapple From The Apple」以降、すべてスタンダード・ナンバーで占められ、ゴードンのプレイも、『One Flight Up』でのものとは違って、まるで型にはまったかのようなバップの定型的なような(私にはちょっと堅い印象がある)吹きぶりで、アドリブのフレーズも、わざとゴツゴツさせているように感じられる。これは、バド・パウエルがプレイしやすいようにと配慮しているのではないかと想像してしまう。その結果、遥かヨーロッパの地に、時代も10年前が冷凍保存されていたかのようなプレイが再現されている。その、バップ・テイストをファンはこよなく愛するのだろうと思う。その土ヨーロッパでも、“本場”のジャズということで食いつないでいたのが、次第にブランド化して、クラシック音楽のように定番化していった嚆矢と言えるのではないか、と思う。それだけに安心して聞くことができ、ときおりゴードンが挿入する引用(この曲では競馬の出走ファンファーレなど)に思わず頬を緩めるなどサービスも怠りがない。例えば、黒人の中産階層で一定以上の年齢になると、いつまでも若者向けのチャラチャラしたものを喜んで聴いているとバカにされる、年相応に落ち着いたものといっても、クラシック音楽は堅苦しくてというときに、ちょうどいいのが、このようなジャズということになりはしないだろうか。また、白人でも、ちょっとへそ曲がりのスノッブには格好の対象となったのではないか。そういうニッチなニーズに上手く応えているのが、結果的に時代に取り残されてしまったゴードンなどは典型だったのではないかと思う。ゴードンとしては、意図してわけではなく、それしかできなかったというのが正直なところではないか。そういうストーリーを想像し、そういうゴードンを嫌いではない。

今回は、申し訳ないがどのような音だったのか具体的なことは述べていない。ただこで、一つだけ、『One Flight Up』のケニー・ドリューと、このアルバムでのバド・パウエルの録音されたピアノの音を聴き比べてみてほしい。いかに、パウエルのピアノの音が太く、低く(ドスが利いていて)、打鍵が深いがはっきり分かると思う。そういう音で繰り広げられるプレイが、いかに力強く、聴く者に迫ってくるかも。

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