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2014年9月13日 (土)

ジャズを聴く(13)~デクスター・ゴードン「ゴー」

デクスター・ゴードンのプレイの特徴は二つの面から指摘できると言われている。まず第一の面は楽器の音色とか演奏の仕方といった音の出し方の面で、デクスターのテナー・サックスは朗々と響き渡る伸びやかな音ということだ。教科書的な言い方をすれば、ビブラートや装飾音を多用したビ・バップ以前に流行していたスイング・スタイルの奏法から脱皮して、ゴードンはノン・ビブラートでテナー・サックス本来の飾り気のない力強い音をそのまま出すようした。これは、後のバップ・テナーたちに大きな影響を与えたと言われている。

そして、第二の面は、演奏の仕方、もっと絞ればアドリブ、すなわち原曲のメロディをどう破壊し再構築して独自の演奏内容を繰り広げるか、というところで、目立った特徴はレイド・バックすなわち、リズムに対する極端な後ノリと言われる。これ以上遅れるともたついてしまうという寸前のタイミングで出てくる彼の音は、聞き手をリラックスさせまた、一つ一つの音に重みとインパクトを与える効果をもたらす。

第一面での伸びやかで豊かに響き渡る音が、第二の面での"ため"を作ったうえで心地よいアドリブのメロディを奏でるからこそ、聴き手を飽きさせないのだと思う。したがって、デクスターのサックスが奏でる音を追い続けながら聴くと、わくわくして楽しい時間があっという間に過ぎていく。

そしてさらに、デクスターのプレイを引き立てている特徴的なこととして、ジャズのスタンダードのみならず、クラシックや流行のポップスまで、確信犯的な引用をプレイの随所で挿入することだ。それを絶妙なタイミングで挿入することによって自在に緩急を使い分け、聞き手にグルーブ感とリラクゼイションを与える。この点が彼のファンにとってはたまらない魅力ではないかと思う。 

 

Go    1962年8月27日録音

Jazdex_goCheese CakeI

Guess I'll Hang My Tears Out to Dry

Second Balcony Jump

Love for Sale

Where Are You?

Three O'Clock in the Morning

 

Bass – Butch Warren

Drums – Billy Higgins

Piano – Sonny Clark

Saxophone [Tenor] Dexter Gordon    

 

1962年にゴードンは渡欧するがこの録音は1962年8月に行われており、言うなれば渡欧直前の録音である。このアルバムを聴くと、このページの上のところで述べたゴードンの特徴がよく分かる。“たっぷりと息を吹き込んだ太い音色のサックスをゆうゆうと奏でる、ごっつく優しい大男”というようなイメージそのもので、野太い伸びのある音で、小細工を弄することなく楽器がよく鳴っている。しかし、その一方でひとつひとつの音には芯があって輪郭がはっきりしていて、切れがあるため、荒々しい感じはしない。だから、音自体は重い音なのに鈍重な感じはなくて躍動感を失わず、ゴードン独特の“後ノリ”が聴く人にそれと分かるように活きてくるのである。デクスター・ゴードンが好きだという人は、ゴードンの吹くサックスの音に魅力を感じるという人が多いのではないか。そして、“後ノリ”と評される歌い回しで、アフタービート気味に、もたついている感じさせないぎりぎりのところでフレーズが出てくる、微妙なズレの感覚が、ストレートに奏されるフレーズが滑らかに流れ過ぎないようにアクセントとなって、聴く者の注意を引くことになっている。それはまた、全体として悠然とした流れのようなプレイの中でメリハリを作っている。とくに、ゴードンのアドリブは細かい刻みの速いパッセージを交じえて変化をつけるようなことは行わず、ゆったりとしたフレーズを悠然と続ける傾向にある。そこでの“後ノリ”は、ある種の変化を与えることになり、好きな人には味わい深い印象を与える効果を及ぼしている。

1曲目の「Cheese Cake」ベースの低音からはじまって、シンバルが被さるようにリズムを刻んでいく重い導入に、あっさりした感じの問いかけるような短いテーマのサックスが入ってくると、ピアノが応答するかのような対旋律を返すやりとりが繰り返され、アドリブに入っても、基本的にテンポや全体の雰囲気が変わることがない。多くのプレイヤーは、重い導入でミディアム・テンポのテーマから、アドリブパートに入ると速いパッセージを入れて鮮やかな場面転換による変化をいれようとする。例えば、ソニー・ロリンズの『サクソフォン・コロッサス』の第一曲目「セント・トーマス」のアドリブの入ったところの急激な変化などが典型例だ。これに対して、ゴードンは8分音符を中心にした大らかなフレーズで悠然とプローしていく。しかも、ゴードンのアドリブは一つの流れのように異なる要素を挿入させて、音が上下に跳躍したり、遠く転調させるようなことはせず、まるで大河の滔々たる流れのように大きく形を変えないフレーズを続ける。聴く人によってはスリルに欠けるといわれるかもしれないが、それで単調にならないのは、サックスの鳴りのよさとゴードン独特の歌い回しによるのだろう。それによって、ちょっとダークで、どっしりした重量感、そして、そこはかとない哀愁をファンは感じ取る。

2曲目の「I Guess I'll Hang My Tears Out to Dry」は、打って変わってスローバラードになるが、センチメンタルになりすぎるように嫋々と旋律を歌うこともなく、一見、単にテンポを落としただけで淡々とフレーズを吹いて、それを最後まで続けてしまう、いってみれば力技をやってのけてしまう。これも比較で、またまた持ち出してしまうがソニー・ロリンズなどでは、たしかに甘さを極力控えめにするところは相通じるところがあるけれど、最後近くになって、その淡々としたプレイで溜めたものを一気に吐き出すかのように感情を込めて劇的な盛り上がりを作る。しかし、ゴードンはしないのだ。

4曲目は「Love for Sale」というスタンダード・ナンバー。有名な曲らしく、サックスで最初に提示されたテーマはよく知られているとのこと。『サクソフォン・コロッサス』の第一曲目「セント・トーマス」にちょっと似ているようにも思える。ジャズ・ボッサと4ビートのどっしりとした躍動感に漲るリズムセクションに乗って、リズミカルではあるのだけれど、重量感溢れるプレイで。決して疾走することなく、じっくりと、たんたんとフレーズを紡ぐように聴かせてしまう。

6曲目の「Three O'Clock in the Morning」はアルバムの最後を飾るには軽妙な曲でまるで肩透かしのような洒落っ気が何とも言えない。

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