無料ブログはココログ

« ジャン・フォートリオ展(6) | トップページ | ジャズを聴く(12)~リー・コニッツ「リー・コニッツ・ウィズ・ウォーン・マーシュ」 »

2014年9月10日 (水)

ジャン・フォートリオ展(7)

第3章 第二次世界大戦後(1945~1964年)~晩年

Fautrierveg最後の展示のところにきました。正直なところ、この展示に辿り着いたときには閉館時間が迫ってきて、また、ずっと立ちっぱなしであったことから、少しく疲労感を持ち始めたこともあって、気力が萎え始めていました。しかし、作品自体は魅力的なのは感じられたので、勿体なかったというのが実感です。もっと、じっくりと見たかった。

それは、晩年の作品に至って、これまで見てきた作品と明白な違いが生まれていて、それが目立っていたように見えたからです。その違いとは3点ありました。それは、ひとつは、作品のサイズ大きくなったこと、ふたつめは、作品画面上で色彩の鮮やかさが目立つようになったこと、そして三つ目は、それまで具体的な物を特定して描いていたことがなくなったことです。おそらく、ひとつめとふたつめはみっつめのことから派生したことであるように思えます。「アンフォルメル」とか言われて、一見では具象画とは思えない作品になっていましたが、フォートリエの作品は対象の外形を写実するのではなくて、対象物の存在を画面に表わそうとしていた、というのが、私のフォートリエの作品に対して持っていたイメージでした。だから、一見抽象画とに思われるとしても、それは作者の理念とか内心とか幻想とか、あるいは絵画の表現要素を抽出拡大したような抽象画とは、ひとあじ違うものという捉え方をしていました。

しかし、ここにきてフォートリエの作品は、その対象と離れてしまったようなのです。それゆえなのでしょうか、以前作品では、それ程感じられなかった色彩の美しさなどの要素が、ここで見る作品では、突然のように感じられるようになっていました。ぱっと見ただけでは、おなじような作品なのですが、これ以前の作品とは、全く異質の作品であるかのように、私には見えました。私の見方が間違っていたのか、何か見落としていたのか。晩年になってフォートリエが絵画に対する姿勢を改めたのか、多分前者が原因なのでしょう。

Fautrierblue_2「黒の青」という作品を見てみましょう。薄く彩色された紙の地に白を主体とした絵の具が分厚く塗り重ねられ、その盛り上がった表面に、黒や青その他の色で薄く彩色され、その上に線あるいは溝のような傷がつけられ、その部分は表面の下の白い絵具が現われている。作品タイトルも何を描いたのか示されていません。これは、例えば、今までの技法で即興的に作品を制作しているうちに、画家が美を発見したというような技法のひとり歩き、あるいは即興性による結果として作品ができたというものなのでしょうか。多分そういうことはないと思います。それは、例えば中央の絵の具を厚く塗り重ねるということについて、表面的で即興的な美を求めるというのであれば、そんな面倒くさいことはする必要がないはずです。たしかに、絵の具が厚く層をなしていることで量感を感じさせることができるということはあります。しかし、単に表面を盛り上げて量感を表わすだけでかれば、他にもっと楽な方法があるはずです。そこをあえて、何度も何度も繰り返し、絵の具を塗っては乾かすことを行い労力をかけたのは、そこに、フォートリエがそこに絵の具を塗るという描く行為を繰り返さなければならない何かがあったのではないか、と思い始めました。描いては、また、その上から新たにその上に描くということ。それは、眼に見える表面の下に、描かれてはいるけれど鑑賞者の見ることの出来ない描かれたなにかがあるということです。その一部は、表面に傷をつけ削ることで下の層が部分的にあらわれてかいま見ることができます。いままで、厚塗りを、私は量感の表現としてしか見てきませんでしたが、そういう隠されたものがあるということ、いわば重層性ということがあることが、これらの作品にいたってはじめて認識できました。そのことに関してなにがしかの解釈を施すことは可能ですが、むしろ私はそこに現われた、私にとって新しい、隠されていた面を発見させられた。そのことによって、作品の見方を改めさせられるという奥深さを、いまは堪能したいと思います。

「存在」ということは、西洋がこの世に文化として現われて2000年以上ずっと探究されてきたものの、いまだに解明されていないなぞであり、20世紀の有名な哲学者も、存在の神秘に対してその奇跡に驚くことしかできない、ということを言っているのですから。

« ジャン・フォートリオ展(6) | トップページ | ジャズを聴く(12)~リー・コニッツ「リー・コニッツ・ウィズ・ウォーン・マーシュ」 »

美術展」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/564097/60295098

この記事へのトラックバック一覧です: ジャン・フォートリオ展(7):

« ジャン・フォートリオ展(6) | トップページ | ジャズを聴く(12)~リー・コニッツ「リー・コニッツ・ウィズ・ウォーン・マーシュ」 »