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2015年1月28日 (水)

N社のこと~またまた、久しぶり

以前にIRの業務を担当していた時に懇意にしていただいた方の厚意で、先日N社の第3四半期の決算説明会を見学してきました。以前にも、このブログで感想をアップしてきましたが、日本を代表する電子機器メーカーで、社長は創業者でもあり、いわゆるカリスマ経営者ということになっている人です。

今回の説明会は、その社長が自ら会社の経営にとって画期をなす転機だったと宣言し、今後の経営についてビジョンを(本人は個人的妄想とのたまわっていましたが)熱く語るという、決算説明といい投資関係者や報道関係者だけに聞かすにはもったいないほど面白い説明会でした。この会社1973年に小さな町工場としてスタートし、その社長のエネルギッシュな経営で業績を伸ばし、度重なるM&Aによって飛躍的に拡大成長してきた会社です。売上規模でいうと100億円の売上を達成してから15年のスパンで売上高を一ケタ増やしてきて、今年度は1兆円の大台に乗ることがほぼ確定したそうです。15年で売上を十倍にするということを繰り返してきた、というのは売上の増加額が年々増えていったということで、並大抵のことではないことです。社長本人は、当たり前のようなことを言っていましたが、毎年売上を増やしていくすら大変な時代なのですから。で、社長さんは、当然のように15年後には10兆円の売上高を目指すといいます。常識的に考えれば、規模が大きくなるに従って、10倍に増えることの難易度はどんどん高くなっていくはずです。だから、本人は個人的妄想と言っていました。でも、本人は本気であることは、実際に話しているのを聞いていると分かります。まあ、そんな妄想パワーに触れるだけでも、元気をもらえるじゃありませんか。調子のいい話を景気よく、しかも本気でぶち上げる、しかも、いい歳をした爺さんが、です。50歳の私なぞ、若造とかいわれて、尻を叩かれているような気分でした。話を聞いていて、15年後には達成してしまうのではないか、と思わせる迫力と説得力がありました。比較するのも変ですが、先日の選挙のときの実現するかどうか何ともいえない、実現させる気があるのかどうかも窺えない、景気対策の政策談義などとはレベルの全然違うものでした。

その場は述べられていたビジョンというのは、最初に電子部品のメーカーとしてスタートして、品質の高い部品を提供していた部品業者から、その部品を核として自動車や電機製品の主要な部分を任せてもらうアセンブリーメーカーへ脱皮したのが現在だといいます。今期が転機だと社長が述べたのは、その脱皮が終わったからです。例えば、自動車にはパワーウィンドとかミラー、あるいは電子制御で成り立っている部分がたくさんあります。自動車メーカーは電子機器は専門ではないので、その動く部分全体を一つのユニットととして自動車メーカーは自動車本体に取り付ければいい状態で提供するようになったといいます。こういうところは、最近どんどん自動化されてきたところなので、従来の自動車関連の電装メーカーも作る事ができないので、率先して開発して提案すれば、ライバルがいない状況だそうです。さらに将来は自動運転の開発が盛んですが、そのときにハンドルやブレーキを動かす部分の開発も率先してやっているということらしいです。何も自動車だけでなく、家庭電機製品でも、掃除機の吸引モーターは主要部分でメーカー自身が作りますが、それ以外の部分でも電子制御しなくてはならないところが入ってきているけれど、そこまで自社で開発し作ってしまうと、コストが高くなってしまうので、そういう部分を一括して受注してしまうのだそうです。それを続けていくと、自動車も家庭電機製品もN社を抜きに作れなくなるのです。現在のN社はその方向を目指していると言います。

で、社長さんの妄想ビジョンというのは、それをグローバル規模にして、世界の自動車や電機製品をある部分で支配しようという妄想です。さらに、いままで触れることもしなかった、最終製品まで扱い、グローバル電機メーカーになれば、10兆円の売上も夢ではないそうです。単に数字だけではイメージしにくいと思いますが、利益でいえば、N社は営業利益率が10~15%なので、売上10兆円になれば、営業利益は1兆円を数千億円超えることになり、その利益額はトヨタ自動車のグループ全体の利益とほぼ同じ規模になります。(自動車産業は利益率はそれほど高くないので、売上高は20兆円を上回りますが)

一方で、こんな景気のいい話をぶち上げるのは、別の理由もあるのでは似ないか、と僻みっぽい私は考えるわけです。それは、社長さんの年齢です。多分、15年後まで第一線にいられるかどうか議論が分かれると思います。社長をずっと続けるにしろ、ワンマンといわれ社長さん一人で仕切ってきたのが、ずっと続くということは考えられません。そうであれば、次世代への継承ということが必要となってくると思います。優秀な人材がたくさんいらっしゃるでしょうから、ことさら次のことを問題にするのはおかしいのかもしれません。しかし、この社長さんは、破格の人です。だからいくら優秀な人でも、次に経営を引き継ぐ人は普通の人でしょう。そのときに、社長さんと同じようにグイグイ引っ張っていけることができるかどうか。というのも、いままでN社はパソコンの部品のメーカーでした。パソコンを含むIT機器の業界というのは景気の変動が激しく、N社のような部品メーカーは一時でも判断を誤れば、大量の不良在庫を出してしまったり、逆に急ぎの大量の注文をこなしきれず、ライバルに顧客を奪われる危険に常に曝されています。そこを野生の勘だか、超人的な先を見る目で悉く成功を獲得してきたのが、この社長さんです。だから普通の人ではないといえるのです。そのことは社長さん自身も分かっていると思います。だから、N社が浮き沈みの激しい業界の部品メーカーから、自動車や電機製品のような中長期的な生産計画にもとに注文をだす顧客の主要部分を任されるような会社に脱皮しようとしたのは、優秀な普通の人の長所をもっと有効に機能させて、N社の成長を続けさせることを可能にするためだったのではないか、と私には思えるのでした。だから、社長さんは、自分が退くために手塩にかけて育ててきたN社の本質を変えようとしてきたのではないか、つまり、N社の社長さん離れを自身で進めたのではないか。そう思うと、ちょっと寂しくなるではありませんか。

だから、景気のいい話がぶち上げられた、社長さんの話について、一抹の寂しさを感じてもしまったのでした。

また、次の説明会の時に、どんな顔をして話をするのか楽しみになりました。

 

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