無料ブログはココログ

« ウフィツィ美術館展(4)~第3章 大工房時代のフィレンツェ | トップページ | ジャズを聴く(21)~ズート・シムズ「ズート」 »

2015年1月26日 (月)

ジャズを聴く(20)~ズート・シムズ「ダウン・ホーム」

Jazzootレスター・ヤングの足跡を追ってサックス奏者となり、スウィング様式による最強のサックス奏者と呼ばれた。

白人のサックス奏者。そのプレイの特徴を一言で、“朴訥さ”と言う人がいる。曰く、“田舎の純朴なお百姓さんのような語り口で、一言一言をしっかりとかみしめるように、律儀にフレーズに組み立てて行く。結構ハイスピードの演奏もやるがあんまり軽薄な感じがしない”。ズート自身は高い音を好み、長ずるに及んでテナー・サックスに加えてソプラノ・サックスも吹くようになったという。しかし。イメージとしてズートの音は線が太く、どっしりと腰を据えたような重量感があるように受け取られる。それだから「クール」と反対の「ウォーム」と言われたりするのではないか。

ズートは若いころにビック・バンドにいた経験のせいなのか、アンサンブルの中で自分を生かしていくタイプで、共演者や伴奏者を生かしながら、全体としてコンセプトを実現させていくタイプだと思う。彼のプレイをよく聴いていると、同じような節を同じように繰り返していることが多い。まあ、一部の天才を除けば、毎度ハッとするようなフレーズを差し挟むことなどできない。そうであれば、手持ちのフレーズをうまく使いまわすこということになるだろう。要は、その使い方の問題で、ズートは、それほど豊富でないフレーズを何度も繰り返して積み重ねる。その繰り返しがリズムを作り、彼独特の推進力あるノリを作り出す。繰り返すことによって耳になじんだ節によって、スウィングのビックバンドで培われた、ストレートでスウィンギンなノリが生み出されると、それが聴く者に親近感を抱かせてノリに誘われるような心持ちにさせられる。それが、ズート・シムズの特徴であると思う。それが、朴訥と言われるのではないだろうか。

繰り返しとは、すなわち継続であり、継続するためには安定していなければならない。これは、詰まる所ジャズの大きな魅力であるアドリブの即興的なスリル、この先何が出てくるか分からない展開の読めない楽しみというのはない。節が繰り返し続いていくことを前提に、その繰り返しの安定感が、だからこそ単調に聞こえてしまう人もいるだろう。しかし、それがウォームテイストの源となっていると思う。

 

Down Home   1960年6月7日録音

Jazzoot_down

Jive at Five 

Doggin' Around 

Avalon

I Cried for You 

Bill Bailey 

Goodnight, Sweetheart

There'll Be Some Changes Made 

I've Heard That Blues Before

 

Zoot Sims(ts) 

Dave Mckenna(p),

George Tucker (b), 

Dannie Richmond(ds) 

 

ズート・シムズはリーダーとしてメンバーをぐいぐい引っ張って革新的な新たな何かを創造するというよりも、安定した演奏で安心できる名演をたくさん残したサックス奏者というイメージが強い。そして、ベツレヘム・レーベルに録音した『Down Home』は、そのようなズート像を代表する一枚である。

人によっては単調と言われるかもしれないけれど、アルバム全編にわたって、ノスタルジックなスウィング感に満ち溢れている。これは、ダニー・リッチモンドのエンヤトットノリのドラミングとデイヴ・マッケンナのスウィング風ピアノがズートの暖色系テナー・サウンドとうまく溶け合って、何やら懐かしげで、でも全然古くないうまい按配のサウンドを醸し出す。実は、ドラムスとベースのリズム部隊はズートを煽り立てている。これに対するズートは15歳からプロとしてスウィング・ジャズのビック・バンドで活動した経歴を生かしてスウィング・ジャズのテイストで、ビック・バンドのソリストのようにバンドと一体化し、そのソロパートを担うような、バックとのバランスを考えて、スウィングっぽいフレーズをアドリブで駆使している。それが、ズートの特徴である、訥々とした一音一音を律儀に組み立てていく、角張ったプレイが、フレーズをヨコの流れではなくて、タテの刻みとして聴く者には捉えられるだろう。それが、自然とベースとドラムのリズムに自然と注意が行って、レトロ調のリズムがさらに印象強くなって、そのリズム部隊がズートを煽る、という循環。それが、シンプルでノスタルジックという雰囲気でありながら、全体にユルんだりダレたりしたところがいささかもない。

 

« ウフィツィ美術館展(4)~第3章 大工房時代のフィレンツェ | トップページ | ジャズを聴く(21)~ズート・シムズ「ズート」 »

音楽」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ジャズを聴く(20)~ズート・シムズ「ダウン・ホーム」:

« ウフィツィ美術館展(4)~第3章 大工房時代のフィレンツェ | トップページ | ジャズを聴く(21)~ズート・シムズ「ズート」 »